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技術報告集

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精研技術報告集 No.16 2016

  1. 局所排気移動式アームの開発・施工事例-スペシャルメニュー顧客ニーズに対応せよ-
    丸尾 孝広

    本建物は、抗がん剤や免疫養成剤などに使用される高活性製剤を使用します。この高活性製剤は、薬理活性が非常に強く、効果も大きいですが、健康な人が吸い込んでしまうと、非常に有害な製剤です。そのため、製造過程において「封じ込め設備」や「局所排気設備」が必要となります。今回の発表では、「局所排気設備」の開発・施工事例をご説明します。

  2. 熱画像計測装置による性能確認事例と今後の活用方法
    西村 一陽 佐藤 智之

    熱画像計測装置を用いて高所に設置した輻射パネルヒーターの性能確認を行った。熱画像計測装置の特徴を活かすことにより、測定結果の明確化、安全性の向上、性能確認時間の短縮を図ることが出来た。当工事の性能確認事例とその他事例での活用方法を報告し、今後の熱画像計測装置を用いた性能確認に役立てていきたい。

  3. 植物工場に適した配風システムの開発-単段式配風装置の製作と気流環境計測-
    隅谷 大作

    完全人工光型植物工場では室内に多段式の栽培ラックを設けて様々な植物を栽培するが、栽培ラックの位置によって気流環境(温度、湿度、風速)が異なるため、生育ムラが生じる原因の一つとなっている。
    そこで、均質な気流環境が提供できる配風システムを構築するための第一ステップとして、送風機および単段の栽培ラックとチャンバーボックスを組合せた単段式配風装置を製作し、生育中のリーフレタスを配置して、栽培ラック内の温湿度および風速の気流分布を計測した。
    その結果、栽培ラック内ではほぼ均質な風速が得られ、温度は1℃以内、湿度は5%RH以内のゆらぎに収めることができた。

  4. 植物工場空調システムの最新動向-植物活動を反映した空調シミュレーションによる最適環境制御-
    上田 保司

    植物工場では、栽培野菜の収穫を一定以上確保できるとともに、栄養価を高め、病気予防などに役立つ野菜の機能性も向上できる環境制御が望まれる。これらを実現するには、温湿度・気流などの空調環境や照明光の分布に応じた植物の生育状況や空調システムの構築を行う必要がある。
    このニーズに応えるべく、大阪府立大学植物工場研究センター・最適化空調プロジェクト(以下では空調プロ)では、CFD(数値流体力学)による温度・気流解析と植物解析とをカップリングした空調シミュレーションツールの開発を行っている。本号では、本ツールの内容を紹介するとともに、リーフレタスの栽培実験に基づく解析精度の検証結果を示す。

  5. クレーン接近防止の応用
    箕 晃義

    大型天井クレーンの接近防止は、天井クレーン相互の安全圏内位置確保、建屋の強度による走行規制、クレーン操作者へクレーン位置検出と警報ブザーで意識の確認と危険区域の案内等に使用されています。
    一般的な接近防止を用いると、建屋強度を考えない場合は、クレーン同士が衝突しない位置で走行クレーンをある一定の距離で停止させ、安全を確保させる。建屋強度を考えた場合、走行スパン(柱間)が弱い場所には、クレーンが走行スパン内に2台入らないように建屋強度がもつ最大距離位置で、接近防止装置の距離設定で停止させ安全を確保させるが、問題としてはクレーン間最大距離設定の場合、走行スパーン(柱間)の強度が強いところでも、走行スパンの強度の弱いところの距離設定が適用され、走行位置が開き、クレーン作業が効率的に行なえない。走行位置クレーン作業を効率的に行なうには、クレーン同士がお互いの走行位置情報、建屋強度情報をシステムに組込まなくてはなりません。クレーンにレーザ距離計を取り付け、走行位置測定し、クレーン間に光通信を取り付け、情報を共有し、走行建屋の強度を考慮しながら、強度が低いところはクレーン間を最大距離で停止し、強度が高いところはクレーン間距離を最小で停止し、クレーン作業を効率的に行います。

  6. 香港地下鉄西港島線における技術提案事例
    新井 聡 森 保史 東 祐介

    香港では、長年にわたる交通渋滞解消・緩和のために2000年頃から香港島と九龍島でインフラ整備が進められている。その中でも香港島中心地の金融街中環(セントラル)から一駅西側の上環(シェンワン)駅から西に延びる西港島線(West Island Line)の西営盤(サイインプン)駅B3出入口連絡路工事に凍結工法が採用された。

  7. 供用しながらの耐震改修工事への凍結工法の初適用と建物レベル変位の管理-仙台高地簡裁庁舎耐震改修工事-
    伊藤 武生 藤原 真太郎 大舘 良吉

    仙台高地簡裁庁舎耐震改修工事において、既存建物の下部を掘削し仮受支柱を設置するまでの地盤の崩壊及び建物の沈下を防止する目的1)で凍結工事を施工した。『建物の自重を凍土で支える』という日本で例が無い特殊な工事であったが、掘削による沈下を予測して凍土造成・抑制を行ない、建物レベル変位を許容値内に収めることができた。その建物レベル変位の推移と、凍結運転状況との関連性も報告する。

  8. 地下水流のある地盤における凍土造成解析
    久門 義史

    地盤凍結工法への地下水流の影響把握の精度向上のため、熱伝導項に水移動による熱伝達項を組み込んだ差分熱解析法を開発した。まずは差分構成式について説明を行う。その後、冷却温度や凍結管配置などについてパラメータ解析を行い、施工条件が凍土造成に与える影響を調べた。

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精研技術報告集 No.15 2015

  1. パイプルーフアーチ止水凍結の新技術開発
    北川 貴由 馬道 佳代 小椋 浩 伊豆田 久雄

    地盤凍結工法は、地盤中に含まれる水分を凍結させることで、地盤の強度および止水性の向上を図る地盤改良工法である。そのほとんどは、地下水位以下の飽和地盤において施工が行われており、地下水位より浅い深度の不飽和地盤では、需要が比較的少ないことや凍土の強度低下への懸念からほとんど施工が行われてこなかった。しかし、不飽和地盤であっても、新たな需要の掘り起こしや凍土の強度確保によって、凍結工法を適応できる可能性はある。
    本報では建築物の耐震改修工事における地表面付近での凍結工法の施工を例にとり、不飽和地盤における凍土の力学試験から、不飽和凍土における圧縮強度の飽和度依存性を調べた。また、施工管理に向けて、現地盤の含水比測定に基づく強度確認方法を提案した。

  2. 水の凍結膨張圧を利用した「コンクリート構造物破壊技術」
    三輪 明広 小椋 浩 植木 和幸

    昨今の都市部の建築工事では、ほとんどの場合、既存建物の解体工事を伴い、大規模な既存建物を解体することも多く、とくに地下の解体では基礎梁、フーチング、造成杭などの大型鉄筋コンクリート部材を解体する事例が増えてきている。このような大型基礎の解体は、大きな打撃音、振動.粉慶などが連続的に発生するという問題点があり、工事現場周辺への環境負荷の小さい解体工法が求められている。
    そこで今回、水の凍結膨張圧をコンクリート構造物に与え、一定間隔でひび割れを入れ、プロック割りすることを容易にする「コンクリート構造物破壊技術」を開発した。本報告では、本技術の原理と凍結破壊実験について報告する。

  3. フロン排出抑制法に関する取り組み
    山原 啓輔 田原 伸一 星野 正雄

    フロンに対しての規制はオゾン層の保護を目的とし1987年モントリオール議定書の採択を受け、特定フロンCFC(R12等)は段階的に生産及び消費を削減し2009年末で全廃、HCFC(R22等)は段階的に生産及び消費共に削減し2020年に全廃の予定である。
    これらのフロンの削減に伴い代替フロン(HFC)の生産量がふえてきたが、新たに地球温暖化への対策も必要となりフロン回収・破壊法(2001年)が施行されるに至った。内容はフロンを使用した製品の撤去時、修理時にフロンを回収、大気に放出する事無く適切に破壊処理を行うものである。
    施行より国内の回収量は増加しているが回収率は低迷しており、冷凍空調機器の設備不良や経年劣化により想定以上の使用時漏洩が発生している事が判明した。
    そこで、回収・破壊に加えフロンの製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策が必要となり、フロン排出抑制法が2013年6月に公布された。
    本稿では、フロン排出抑制法の概要及びファシリティ本部での取り組みを述べる。

  4. フィルムロール搬送装置
    荒木 浩一 山尾 佳慶 箕 晃義

    今回フィルムロール搬送装置を2式納入した。ほぼ同様の大きさ・重量ではあるが、表面処理工程の違いにより芯(コア)の形状が異なり、搬送方法が異なる。又、ライン構成も違うものとなっている。二つの搬送装置はクリーンルーム及びクリーンに近い部屋に設置される事となった。

  5. 新型凍上試験機製作における改良点とその効果
    久門 義史

    新たに凍上試験機を製作するにあたり、既存機の懸念点の解消や作業性の向上を目的としていくつかの改良と新システムの導入を行った。その結果、懸念点の解消や精度の向上だけでなく、いくつかの手順で自動制御を可能にし、作業性の効率化やヒューマンエラーの軽減も期待できるようになった。

  6. 不飽和地盤における凍土の強度確認方法の提案
    大石 雅人 上田 保司 小椋 浩

    地盤凍結工法は、地盤中に含まれる水分を凍結させることで、地盤の強度および止水性の向上を図る地盤改良工法である。そのほとんどは、地下水位以下の飽和地盤において施工が行われており、地下水位より浅い深度の不飽和地盤では、需要が比較的少ないことや凍土の強度低下への懸念からほとんど施工が行われてこなかった。しかし、不飽和地盤であっても、新たな需要の掘り起こしや凍土の強度確保によって、凍結工法を適応できる可能性はある。
    本報では建築物の耐震改修工事における地表面付近での凍結工法の施工を例にとり、不飽和地盤における凍土の力学試験から、不飽和凍土における圧縮強度の飽和度依存性を調べた。また、施工管理に向けて、現地盤の含水比測定に基づく強度確認方法を提案した。

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精研技術報告集 No.14 2014

  1. ヒートポンプ熱源の排熱を有効活用した熱源改修事例と省エネルギー検証
    香月 達弘 藤川 貴弘 佐野 正明 藤原 裕司

    排熱の有効活用による省エネルギー化として今回、ヒートポンプ熱源での温水製造時に従来は外気に排気していた冷風排熱を冷房に有効活用するシステムを医薬品工場に導入した。システム導入前後に熱量計測を行い、冷風排熱の活用状況および省エネルギー効果についてまとめたので報告する。

  2. 高薬理製剤工場の重層的な気流制御システムと調整方法
    丸尾 孝広

    高薬理性製剤の医薬品製造施設では、高性能の封じ込め技術が必要とされる。空調設備に関わる室圧制御によりこの封じ込めを行う施設を建設する機会を得たので、そのシステムと試運転調整時に生じた課題の解決策を報告する。

  3. 空調保守点検業務の移り変わり
    藤林 和彦  星野 正雄 森岡 伸二

    当社は創立時より、空調設備機器の保守点検業務から修理・保全・リニューアル工事へと展開してきた。当初は水冷式の機器がメインであったが、1982年に空冷ヒートポンプ式マルチエアコンが発売され、1987年には個別制御可能なマルチエアコンが発売されて本格的に空冷式エアコンの需要が高まった。バブル経済期頃より空冷式への移行が顕著となり、現在は台数ベースではその大半が空冷ヒートポンプ式エアコンとなった。近年は省エネ改修技術の発達や施設のリノベーション需要の高まりにより空調設備の保全活動はファシリティマネジメントの一環として重要である。一方で複合的な空調システムの場合はエネルギーマネジメントの視点から監視、制御の技術革新が注目されているが、保全活動の本質的技術は機器単体の機能、性能維持にあることを再確認したい。メーカサービス活動に責任を負う当社として、水冷式より空冷式へと対象機器が変化したことに伴う保守点検に関わる業務環境及び技術の変化を分析し、今後の保守業務のあり方を報告する。

  4. 照明実験と植物モデル解析に基づく植物工場の空調負荷の低減策
    森内 浩史 上田 保司 吉田 篤正 木下 進一

    栽培植物の蒸散や光合成の影響を考慮した植物工場用空調シミュレーションツールを開発した.植物工場で用いられている照明装置は光および熱を生じ、光は栽培植物の収穫量に、熱は栽培室内の温度分布に影響を及ぼす。したがって、本ツールの精度向上には、照明装置に投入された電気エネルギーのうち、光のエネルギーへの分配比率の把握が必要である。
    本報ではこの分配比率を調べるために、Hf 蛍光灯とLEDを用いた照明実験を行った。照明の種類が空調負荷へ及ぼす影響を、照明実験の結果を取り込んだ空調シミュレーション結果から調べた。以上の結果からLEDの方が空調負荷への影響が小さく、Hf 蛍光灯の安定器またはLED の内部回路を取り外すことで照明装置から生じる空調負荷を6~15%程度削減できることを示した。また、栽培実験との比較により空調シミュレーションの妥当性を確認した。

  5. 屋外設置(7.5+7.5)t×25m ホイスト式橋形クレーン
    川嶋 勇

    屋外型橋形クレーンの納入は約20年ぶりであり顧客は岡山県のあるコンクリート製品メーカーであった。建築基礎用コンクリート杭の増産にあたり敷地内にストックヤードが必要になった。ストックヤードの計画に当たりヤード棟の建築と天井クレーンの組合せは設備コストがかかり、コストを抑えるため、走行レール、レール基礎と橋形クレーンの組合せが採用された。
    本機は、屋内型天井クレーンに比べると、脚部または屋外設置による風荷重の考慮と、機長が長いため運搬上ガーダー(桁)を2分割としたジョイント部と設計計算が多くなる。本機橋形クレーン設計に当たりJIS規格、クレーン構造規格からの抜粋と特に風荷重の取り扱い、ガーダージョイント部及び揺脚部のピン構造について実際の設計における強度計算を記載する。屋外型橋形クレーンの設計は数少なく、今回のようにガーダーのジョイントと揺脚部の取付けをピン構造とした設計は数少ない中でも初めてであり、今後の設計の基本となる。

  6. 白島到達における凍結域直上構造物に対する強制解凍注入のコントロールについて
    清時 健士

    凍結工法の計画時には、通常蓄積された凍上試験データを用いて現場での凍上率、沈下率を推定している。しかし、現場で計測される構造物の変位(変形)量としては、地盤の凍上・解凍収縮が原因ではないものが含まれていることは明らかである。それらの要因としては、凍結に関わる本体工事の手法、凍結域以外の土質、計測対象構造物の拘束条件や剛性等が考えられるが、多くの要因が複雑に関わりあう為、それらを個別に変位予測に反映させる事は難しい。しかし、各要因を分析・分類し、その影響を定性的に予測できれば、現場毎に凍上・沈下の影響を最小限にする対策工の手法の確立に繋がると思われる。
    白島のシールド機到達工事では凍土直上の洞道内に設置された計測機器のデータと、現場条件に基づくアプローチにより、解凍沈下の制御に成功した。その施工データを元に、現場条件を加味した対策手法の考え方を提案する。

  7. 特殊温水管による凍土抑制と液体窒素での部分凍結
    片野坂 明 江口 聡 西村 修

    本工事は、首都高品川線の外径φ12,300mm シールドトンネル上下線間を10.3m×10.8mに切拡げUターン路を築造する際のセグメント撤去、地山掘削、一次覆工、坑口仕舞い、裏込め注入等までの切拡げ作業の為の防護を目的にした凍結工事である。当初計画では、凍結膨張圧に考慮し極力凍土量を抑えた計画になっていたが、施工が進むにつれ介在砂層の存在が発見され数回計画変更を行なった。今回は計画変更に伴って施工した凍結膨張対策、突発的に施工することとなった液体窒素凍結に関して報告する。

  8. 真ひずみ率の導入による凍土変形係数の推定
    大石 雅人 上田 保司

    地盤凍結工法において、合成体凍土の応力計算や施工管理に必要な凍土の変形係数を力学試験から求める場合、供試体上下端面の乱れた領域の影響により、供試体全体のひずみから求めた変形係数は過少に評価される。乱れの影響を排除するために、供試体の健全な領域にひずみゲージを貼付する方法が推奨されているが、これには手間がかかり、測定値には局所的なひずみを測定することによるバラつきが存在する。そこで、本報では、“真ひずみ率”を導入した簡易推定法を提案する。続いて、実験条件ごとの真ひずみ率や変形係数の比較を行い、推定方法を適用できる範囲を示す。また、試験を簡略化して概算的に変形係数を求める方法を紹介する。

  9. 地盤の凍結・解凍予測のための三次元非定常熱伝導解析
    松岡 啓次 隅谷 大作 小椋 浩

    地盤凍結工法では、立坑などの付近に凍結管を埋設し、土圧や水圧に耐える凍土を造成する。造成後、掘削や鋼材のガス切断などの加熱により、凍土の部分的な温度上昇や解凍が生じる場合がある。また、凍土造成の抑制のため、凍結管の冷却液の循環停止や温度を変更することもある。一般に本工法による凍結現場の凍土形状は複雑で、上記のような熱条件の時間変化があるため、経過時間に伴う凍土の範囲や温度分布の事前予測が重要である。そこで差分式による三次元非定常熱伝導解析法を導出し、差分式、境界条件を説明する。実施工の実測値と本解析法による解析値との比較を行い、また、凍土壁への熱浸入の影響を評価するために、シールドトンネルの地中接続工事を想定したモデル解析結果を示す。

  10. 都市トンネルのための地盤改良工法(5)・(6) -凍結工法(1)・(2)-
    小椋 浩 大舘 良吉 伊豆田 久雄

    凍結工法は、炭鉱立坑掘削の際の透水層の止水のため、1862年にイギリスで誕生した。わが国では軟弱地盤かつ建築物や地下埋設物が輻輳する状況で、1962年の初施工から都市土木の補助工法として独自の発展を遂げ、都市の上下水道、地下鉄、電力、通信、共同溝、地下河川、地下高速道路などの建設で用いられてきた。こんにちまでにすでに六百余件の施工実績がある。今後も開発が進む都市地下空間は、さらに深く、さらに大断面となるため、掘削防護用の地盤改良体の信頼性はより高いものが求められる。このため、本工法を適用する機会も増えるものと考えられる。
    凍結工法は、2回にわたって掲載する.第1回目では、凍結工法の原理、施工方法、留意点、対日では、凍結工法の原理、 施工方法、留意点、対象、および設計手法を紹介し、次回では施工事例、効果の評価、および新技術を紹介する。

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精研技術報告集 No.13 2013

  1. 総合評価方式の適用工事における工事成績評価で高評価を得た施工管理技術について
    西川 隆男 佐々木 康博 鈴木 暁彦

    設備工事本部の業務目標は、発注者との協議、書類作成、下請業者への指導・監督を通じて工程管理・品質管理・安全管理・原価管理等の施工管理項目を着実に実施して、発注者から請け負った工事目的物を工期内に完成させ引き渡す事にある。
    本報告では工事を施工管理する上で、重要視した『技術提案書の遵守』、『工事成績評価項目への対応』と『高評価に繋がったポイント』について述べるものとする。

  2. 多用途施設での環境配慮計画とその施工事例
    中川 晶子

    本施設の事業主は建築設備の設計施工・維持管理、地盤凍結、搬送設備の製造、産業機器販売、企画開発などの多様な部門を有しており、その業務機能を集約させた新事業所を建設した。その事業方針に基づく設計の検討事項と、施工段階での対応事例を報告する。また建築設備業の事業者として、設備システムの長寿命化、省エネルギー、省資源等の環境配慮設計の要求に対する方策と今後の課題、並びに施設維持運営での検証手法の有り方についても報告する。

  3. 大阪北共同溝における多現場凍結工の施工について-コスト低減の工夫と-45℃による凍土造成-
    徳原 永治 下見 健文

    本稿では、平成24 年6 月初めから平成25 年8 月中までの約15 ヶ月の短期間に計10 箇所の横坑接続防護工をコスト低減の工夫と精研では初となる凍土造成に-45℃の循環液(コールドブラインFP‐40R)を使用した急速凍結工事について報告するものである。

  4. 山岳工法に併用した凍結工法の止水凍土の温度管理と改善点
    大畝 丈広 大館 良吉

    中央環状品川線中目黒換気所ダクト接続工事において、都市土木工事では施工件数の少ない山岳工法によるトンネル工事が行われた。補助工法として上部横坑上半部の止水に凍結工法、それ以外の本線シールド周囲の止水に低圧浸透注入工法が採用された。本稿は横坑1から3の上半部に分布する高い被圧水位を有し、出水すると流動化しやすい洪積砂層の補助工法として採用された止水凍結について報告する。

  5. 熱交換器搬送用自動走行機能付きクレーン
    山尾 佳慶

    熱交換器搬送用天井クレーンは工場入り口附近にフォークリフトにて運ばれてくる熱交換器を、工場内のX線撮影室内に搬送するためのクレーンである。この工程の自動化を行うため、地上の操作盤からの指示で自動走行を行うクレーンの設計並びに製作を行った。今回はX 線室の上部へ熱交換器を搬送する事を目的としているため、自動動作は走行方向のみとし、横行・昇降は手動にて行われる。以前コイルリフタ搬送用の自動クレーンを設計した際は、無線通信にて操作盤とクレーンの通信を行ったが、今回は空間伝送による通信を採用し、通信の安定化を図った。

  6. 栽培棚への前面パネル導入による植物工場空調の改善提案
    隅谷 大作 伊能 利朗 木下 進一 吉田 篤正

    植物工場では、植物を栽培する上で重要な温湿度や風速などの気流環境が多段に設置された栽培棚の位置によって異なれば、個体ごとのバラツキを生み出すことに繋がるため、できる限り均一な気流環境が望まれる。本報では、今後も増加する完全人工光型植物工場に焦点を絞り、十数段以上の多段栽培棚を有する植物工場に対して、現状の配風システムで生じる問題点を調べた。また、栽培棚の前面にパネルを設置した簡易な設備で気流環境が一様となるような配風システムを提案した上で、現状の配風システムとの比較を、気流シミュレーションを用いて行い、その効果について調べた。

  7. 凍結融解履歴が粘土凍土の一軸圧縮強度に与える影響
    大石 雅人 隅谷 大作 上田 保司

    地盤凍結工法では、過去に凍結融解履歴を受けた地盤に対する施工がほとんどなかったため、凍結融解履歴を持つ凍土の強度に関する研究事例は少ない。今後はこのような施工も考えられることから、本報では、凍結融解履歴が粘土凍土の一軸圧縮強度に与える影響について調べた。実験では、硬さの異なる2種類の粘土とセメンテーション構造を持つ土丹の計3土質について、凍結回数の増加がそれぞれの試料土に与える影響を調べた。また、異なる凍結速度で供試体を作製し、アイスレンズの有無が強度に与える影響について比較した。その結果、多くの条件では凍結融解履歴の影響による一軸圧縮強度の低下はみられず、わずかに強度が低下した土丹についても、施工には影響を及ぼさない程度の強度低下であることが分かった。

  8. 非定常熱解析による不凍水の熱的影響評価
    松岡 啓次 上田 保司 隅谷 大作

    地盤が凍結する場合、氷点温度以下になっても不凍水があるため、一部の間隙水が凍結しない場合がある.地盤凍結工法では、地盤の温度降下や凍結速度をより正確に把握する必要があるため、不凍水を考慮した熱解析が必要となっている.本論文では、不凍水を考慮した差分式による二次元非定常熱伝導解析法と不凍水量の推定式を提案する. これら一連の解析法の精度を検証するため、室内で凍結および、解凍実験を行った。試料土は粘土と砂を用い、間隙水は真水と塩分含有水とした。実験結果と本解析法による解析値との比較を行った.

  9. 植物工場における栽培植物の活動を組み込んだ最適空調シミュレーション手法の開発
    小松 紗代子 上田 保司 岡村 信弥 伊能 利朗 吉田 篤正 木下 進一

    植物工場とは、一般に、栽培環境制御システムを有する植物栽培施設を指す.一年中安定した生産と短期間での栽培が可能であることが特徴である.植物工場の空調システム課題として、コスト削減と最適栽培環境の実現が挙げられる.本研究では植物工場のための最適空調システムを開発することを目的として、植物活動を考慮した空調シミュレーション手法を提案した.植物活動は、温湿度とCO2濃度に影響を与える蒸散と光合成である. シミュレーションに必要な植物に関する諸数値を栽培実験により同定した. また、シミュレーションにより植物工場内の空調環境の状況を把握し、収穫量を評価した.シミュレーション結果と栽培実験との比較から本手法の妥当性を確認した。

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精研技術報告集 No.12 2012

  1. 電気式氷蓄熱装置とガス吸収式冷温水機による最適熱源システム
    森 務

    大規模で負荷変動の大きな施設においては、空調熱源システムの良否が長期的運用面で重要である。今回、新築の公的試験研究施設に導入した電気式氷蓄熱装置とガス吸収式冷温水機を組合わせた空調熱源システムについて報告する。この熱源システムは既存棟を統合した熱源センターとして今後稼動するが、既存水システムからの改善点や今後の課題についても述べる。

  2. ロスコン・アニコンの開発と納入の経緯
    柳本 申二

    給排気混合の無い水噴霧式全熱交換器「ロスコン」は、昭和57年にRCC型、昭和62年にRAA型を開発してから脱臭機能付を含め両形式合わせて平成25年3月現在まで102施設251台納入している。一方、一方向気流式飼育装置「アニコン」は、昭和61年に開発してから現在までAp型を含めて136施設にラック台数で延べ約3800台を納入し好評を得ている。また、ロスコンとアニコンの両方を組み合わせた『ANICON』空調システムは、前述の納入先の内28施設に納めている。ここでは、ロスコンとアニコンの開発と納入の経緯について述べる。

  3. 空調設備における保守契約のメリット
    水沼 登史夫

    当社では、空調設備機器の試運転・修理・保守・リニュアル工事を行っている。メンテナンス(保守:正常な状態を保ち維持すること)、その役割は、長年使用する機器・設備を最良な状態に保ち効率的な運転状態を維持することで、省エネルギーに寄与してゆくことが重要なことと考えられる。
    今回、過去のメンテナンス業務内容を分析することにより、課題と今後の展望を検証する。

  4. 植物解析モデルを組み込んだ空調シミュレーションツール
    小松 紗代子 上田 保司 岡村 信弥 伊能 利郎 吉田 篤正 木下 進一

    植物工場は、我が国における低自給率などの食糧問題解決や、新たな産業分野の開拓による経済活性化などの観点から、将来を大いに嘱望されている有望技術である。しかしながら、現状では、機能性向上と収量アップを図るための植物生理の制御技術、雇用拡大のためのバリアフリー化、照明・空調などのランニングコストの低減など、解決するべき多くの技術課題が存在する。
    今回、植物工場における収量アップとランニングコストの低減を図るための最適空調システムの確立を狙いとして、照明や周辺空気との熱授受と、蒸散や光合成などに由来する水・CO2の授受とを考慮した植物解析モデルを既存の空調シミュレーションツールに取り入れて、新たなツールを開発した。
    また、別に行ったリーフレタスの栽培実証実験結果との比較から、本シミュレーションツールの解析精度を検証した。

  5. 無線LANによる搬送機器の制御
    山尾 佳慶

    一般に搬送機器を制御する際に、各機器間で信号のやり取りを行うため、シーケンサから各機器へLANケーブルを配線し、ネットワークを構築する。これによって、I/O通信よりも多くの情報を通信する事が出来るため、複雑・精密な制御を行うことが出来る。また、複数の機器から得られた情報をPCなどに送って一括管理することで、1日の仕事量や在庫の管理を円滑に行うことが出来る。
    しかし搬送機器には自走する物も多く、LANケーブルを配線することの出来ないものも多い。そこで無線端末を使用し、無線LAN環境を構築した。これによって配線を行うことなく、工場全体の設備のデータを通信する事ができるようになり、移動式の搬送機も容易にネットワークに組み込む事ができる。又、LANケーブルの配線作業を削減する事で、現地工事の際の作業工数を減らし、製造コストの削減を行うことが出来る。

  6. 凍結工法の解説
    伊豆田 久雄 小椋 浩 渡邊 恒方

    凍結工法は、地盤を冷却し地中の水を氷に変えることで、完全な遮水壁と高強度の土留壁を地中に均質に造成する地盤改良である。
    図一6.6.1に示すように地中に凍結管を埋設し、その中に凍結ユニットで冷却される不凍液(ブライン)を循環し続けることで、凍結管周りの凍土柱を太くさせ最終的に連続する凍土壁を造成する。

  7. 凍結工法50年の歩み
    櫛田 幸弘 伊豆田 久雄 小椋 浩 吉田 聡志 渡邊 恒方 上田 保司

    土の中の水を氷にする・・・この極めてシンプルな地盤改良が我が国で初施工されてから、50年という歳月が流れました。地盤凍結工法は、他の地盤改良工法では困難な状況での掘削を可能にする最後の切り札と呼ばれることもあります。大都市に残された最後のフロンティアである地下の開発は、今後ますます深まり、ますます大規模になろうとしています。本工法がこれからの50年間もいろいろな場面で役立てるために、誕生から50年間の節目に、これまでの独自技術開発の歩みを眺めてみたいと思います。
    本報文は“地盤凍結工法の技術史”として、我々が積み重ねてきた解析法導出・物性基礎研究・技術開発・施工完遂について、時代背景やその経緯および成果を書き記すものです。このため、図・表・写真の掲載は最小限に留めており、また技術内容については書籍や文献をご参照願うこととします。

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精研技術報告集 No.11 2011

  1. 外気露点温度制御による恒温低湿空調の省エネルギー化
    香月 達弘 藤原 裕司

    産業用途で用いられる恒温低湿空調に於いて、低湿度維持のために通年運転している低温用熱源とその補機のエネルギー消費を抑制する目的で、外気露点温度から除湿の要否を自動で判断し、必要がなければ、低温用熱源とその補機を停止させる省エネルギー制御を考え、某工場の恒温低湿空調に導入した。本報では、制御導入前後の空調用電力使用量に基づく省エネルギー効果の検証の他、当制御の省エネルギー効果について考察を加えた。

  2. エネルギー計測結果からの熱源改修検討と改修後の検証
    稲津 亮 井口 忠臣 香月 達弘 藤原 裕司

    地球温暖化防止の観点から、事業者が省エネルギー化を推進することは喫緊の課題である。空調機器のエネルギー使用割合は高く耐用年数を迎えた機器を更新する際には価格だけではなく、省エネルギー性能も求められる。こうした現状を踏まえ、本稿では熱源機器の更新に際して省エネルギー機器の選定、提案及び施工に至るまでの過程を事例に基づいて述べる。また、熱源機器の更新前後にエネルギー計測を行い熱源機器の更新によって、提案通りの省エネルギー化が行われたかどうかの検証事例についても述べる。

  3. 気流解析ツールを用いたダクト内の圧力損失計算
    隅谷 大作

    自社開発した気流解析ツールは、室内の気流環境・温熱環境・濃度環境を事前に把握し、可視化することができる。また、本解析ツールは室内の圧力分布も同時に計算を行うため、壁面摩擦によって生じるダクトの圧力損失計算にも利用できると考えられる。
    そこで、本報では、一般的なダクトの圧力損失による計算値と本気流解析ツールによる解析値との比較から、本解析ツールの圧力損失計算への適用性を検討した。

  4. RCC型ロスコンの熱解析法と計算例
    松岡 啓次

    精研の開発した排熱回収装置としは、RCC型ロスコンとRAA型ロスコンがある。RCC型の熱解析は、二十数年前に完成しているが、まとまった資料として存在していない。RCC型は、給気側と排気側に熱交換コイルを別々に設置するので、空気の混合が全く生じない装置である。RAA型と同様に、空気の低エンタルピ側に噴霧する。このため,コイル内のチューブやフィンを濡らし、水滴の蒸発によりチューブ内の循環水の温度を下げ、高エンタルピ側コイルの温度低下が大きくなるため、空気がより大きく冷却されて熱交換効率が高まる。
    昨年の精研技報でRAA型の熱解析等を報告したが、今回は、RCC型熱解析を報告する。このRCC型の熱解析は、空気の結露(除湿)と水滴の蒸発(加湿)を扱い、更に循環水温度は、事前に決まった値でなく、給排気の温湿度と風量により決まるので、他の熱解析の参考となると思われる。
    実機での測定値と計算値の比較、給気・排気や伝熱面の熱的状態等の計算例を示す。

  5. コイル搬送用天井クレーンの自動化
    山尾 佳慶

    コイル搬送用天井クレーンは、コンベア型搬送装置から運ばれてくるコイルを所定のコイル置き場まで、或いはコイル置き場からコンベアへ搬送するためのクレーンである。この工程の自動化のために、現在地や他の搬送機の情報から自動動作を行うクレーンの設計を行った。顧客より今回は初の自動化であり、コイルを置く動作を除く半自動動作を行いたいとの事なので、コイル搬入口からコイルを取る動作、及び各コイル置き場への移動のみを自動で行う事にした。設計の際には無線通信を使用することにより配線作業を簡略化し、今後必要な機器の追加の際も柔軟に対応できるようにしている。このクレーンにより、コイル置き場への搬送に掛ける人手を減らす事が出来る。また、将来的には全ての工程の自動化を行い、コイル搬送工程の無人化を図る予定である。

  6. 不凍水の影響評価のための凍着せん断強度実験-モルタルと凍土との組合わせの場合-
    大石 雅人 隅谷 大作 上田 保司

    凍結工法における凍土の造成や凍着面の維持・管理をより合理的に行うことを目的に、地中構造物を想定した鉄材やモルタルと凍土との凍着せん断強度を調べてきた。本報では、凍土の力学特性に影響を及ぼす不凍水と凍着せん断強度との関係を調べるため、氷点付近から不凍水分量が極めて少ない低温度までの広い温度範囲で、モルタルと砂および粘土凍土との凍着せん断実験を行った。また、不凍水分量と間隙率などから実験における氷の付着面積を求め、凍着せん断強度との関係について考察を行った。

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精研技術報告集 No.10 2010

  1. 給排気風量の可変するクリーンルームの室圧制御事例
    宮北 智仁 西川 隆男 佐野 正明 佐藤 洋平 藤原 裕司

    クリーンルームは汚染空気の侵入を嫌うために気密性が高く、僅かな風量変化でも大きな室圧変動が引き起こされる。今回、某製薬研究所新築工事にて実験室の運用パターンに応じて給排気風量を可変させるクリーンルームを施工した。多様な運用パターンに伴って風量が変化するため、その室圧制御に高速可変バルブ(AFV)とハイスピードモーターダンパー(HS‐MD)を使った制御技術を導入した。本報告では、試運転調整時に想定した多用な運転パターンに対する各種実測データを元に、導入した制御方法の有効性について述べる。

  2. 冷水設備の改修提案と施工事例
    須藤 圭祐 久保田 博之

    冷水製造システムの熱源更新工事に伴う更新機器の選定方法、熱源設備を稼動したままでの施工計画、計画の進捗に伴う与条件に対応するために変更を行った熱源システムの制御方法について施工事例を示す。

  3. 直膨冷却方式による生産プロセスに使用する冷風装置の改善事例
    森 利浩 光宗 健蔵 植木 誠

    某食品工場における製品冷却用-30℃冷風装置は、設置後28年経過していて設備を全面的に改修した。改修にともない、①冷風装置フローの簡易化、②新機器による能力アップ、③製品温度調節の細分化、④機器設置スペースの縮小化に着目して改善をおこなった。又、改修に伴う生産停止を最小限に抑える施工計画とした。本報では、改修前後の設備内容とその施工計画について示す。

  4. 排気口付近の風速計測値との比較による気流解析ツールの精度検証
    隅谷 大作

    自社開発した気流解析ツールは室内の気流環境を把握できるので、空調機器の配置の検討や顧客への説明資料などとして利用されている。今後は、気流解析の精度向上を目指すために、より多くの事例に対して計測値と解析値との比較検証が必要と思われる。そこで、本稿では、実測する機会が得られた某ガラス工場実験室内の排気口付近の風速計測結果と本解析ツールによる解析結果とを比較し、解析ツールの精度検証を行った。

  5. RAA型ロスコンの熱解析法と計算例
    松岡 啓次

    排熱回収装置として開発されたRAAロスコンの熱解析は、二十数年前に完成し、手書きとしてまとめているが、その後部分的に修正を加えているので、まとまった資料として存在していない。この熱解析は、空気の結露(除湿)、水滴の蒸発(加湿)等の現象を扱っているので、他の熱解析の参考となることを期待して、この機会に報告する。
    RAAロスコンは、外気と排気等の空気を混合せずに熱交換する装置である。空気の低エンタルピ側に噴霧し、熱交換面(伝熱板)を濡らし、高エンタルピ側の熱によって、水滴が蒸発することにより低エンタルピ側への熱移動が大きくなり、その結果、熱交換効率が上げられる。この伝熱板を介しての顕熱・潜熱の熱交換について 説明する。
    実機での測定値と計算値の比較、外気・排気や伝熱面の熱的状態、伝熱板の材質変更による熱交換効率の変化等の計算例を示す。

  6. サービスデータにみるクレーン・搬送装置の修理業務の現況
    米田 祐次

    産業システム部では過去に納入したクレーン、搬送装置その他の点検及び修理が業務のひとつの大きな柱となっている。そこで過去2年間の修理作業について分析し、その傾向を調べることで従来、サービス業務に携る者が感じている課題を検証していくこととする。

  7. 凍結性状データベース検索に基く解凍沈下の傾向分析
    小松 紗代子 隅谷 大作

    地盤凍結工法において、解凍後の沈下が構造物などに影響を及ぼす場合がある。解凍沈下に関しては既往研究事例が少なく定量的な予測手法は確立されておらず、現在は過去の施工経験に基づいての予測が行われている。
    本稿ではより合理的かつ定量的な解凍沈下の予測手法を得る手がかりとするため、現場採取土の室内凍結試験結果が蓄積された凍結性状データベースを検索・分析し、解凍沈下と物理定数、凍上特性などとの関係を調べた。その結果、解凍沈下には、地層・細粒分含有率・含水比・乾燥密度・間隙比などが関係しており、それぞれがある条件を満たすときに解凍沈下が大きくなる可能性があることがわかった。また、洪積層は沖積層に比べると大きな解凍沈下は起こりにくいことがわかった。これらの結果から、凍上沈下試験の必要性を判定する基準を提案した。

  8. 凍結技術を用いた止水機構を有する水中部の仮設ドライアップ工法の開発
    宮沢 明良 松能 功 川合 信也 羽渕 貴士 守分 敦朗

    港湾・護岸・河川構造物の干満帯から水中部での補修・補強工事では、鋼製函体を使用してドライな作業空間を構築する仮設工法による施工方法があるが、複雑な形状の構造物に対する止水の確実性が課題として考えられる。そこで、水を含んだ止水材を凍結させて止水効果を確保することで、複雑な形状に対しても確実に止水が可能な仮設ドライアップ工法を開発した。本稿では、本工法の概要を示すとともに、止水性確認実験の結果にもとづいて本工法の止水効果について報告する。

  9. 講座:高松塚古墳壁画の保存対策- 5.高松塚古墳墳丘部の冷却-
    石崎 武志 犬塚 将英 吉田 聡志 伊豆田 久雄

    高松塚古墳では、壁画発見より約30年経過した2002年に犠画近傍に黒色のカピの発生が確認され、壁画への影響が懸念されたため、2003年に緊急保存対策委員会、2004に恒久保存対策検討委員会が立ち上げられた。
    冷却方法の検討内容、墳丘部の冷却の現状について以下に示す。

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精研技術報告集 No.09 2009

  1. 直交型熱交換器を組み込んだ熱回収型除湿空調機の開発
    山本 英夫 引地 一郎

    処理空気の除湿方法の内、冷却除湿方法は除湿空気が露点に近い低温度で給気されるため、再熱エネルギが多大となる。本報告では、既に開発している空気直交型全熱交換器の熱交エレメントを利用して、取り入れ外気と除湿空気を直接熱交換することによって、外気を除湿空気で予冷、逆に除湿空気を外気によって再熱する方法を考え、試作機を製作して省エネ特性を調べた。その結果から、予冷・再熱エネルギの削減分は、冷却・除湿・再熱の総合計に対して約48%となり、大きな省エネ効果を得ることを示した。更に、某飲料工場に採用された条件で回転式デシカント空調機と比較した結果、50%以上もの空調負荷および一次エネルギが削減できることが分かった。

  2. スプレーノズルを用いたエアワッシャによる空気浄化
    小田 久人 藤澤 修三 山本 英夫

    Air washers are widely equipped in recent semiconduclor manufacturing factories to remove undeirable gaseous matters such as l¥'JI3. SOx from outdoor air. Recently. the appropriate choice of spray nozュ zles and mist eliminator for the air washer has enabled them to be more sophisticated than the conven・ tional ones that have a large body and a high ratio of liQuid to gas (L/G). In addition. the air washer equipped with lhe heat recovery systcm was successfully developcd as a new application. The new air washer system including the heat recovcry typc washcr is described in this paper.

  3. チューブプレート搬送装置(アルミニウム薄板の搬送)
    荒木 浩一 箕 晃義

    チューブプレートとはプレートフィン型熱交換器において積層していくアルミニウムの板の事である。薄く大きなアルミニウムの板は変形しやすく、運搬に際して非常に繊細な取り扱いを必要とする。このアルミニウム板を多数積み重ねて熱交換器に成型していく工程において当社の搬送機が非常に大きな役割を果たしている。

  4. 遠洋漁船の冷凍冷却装置制御のためのインバータの耐久性向上
    堀野 教之 有森 賢児 増井 克教

    インバータは、モータ・電源・照明など電気・電子製品に広く応用されている。冷凍・空調分野では、ファンやポンプの運転をインバータで制御することによって省エネを図るケースが増えつつある。
    今回、遠洋漁船に搭載されている魚類の冷凍冷却システムについて、インバータの導入による省エネ実証実験が計画・実施された。しかしながら、通常、インバータは陸上設備内での使用が想定されているため水分や振動には弱く、遠洋漁船に搭載するには、耐久性を高める工夫が必要である。
    本稿では、防水・塩害対策、振動対策など、遠洋漁船に搭載するために行ったインバータの耐久性向上策について述べる。また、遠洋漁船に搭載後の動作状況と不具合改善の経過を説明する。最後に、今回の実績と課題の整理に基づいて、船舶にインバータを導入する際の耐久性向上策の指針を提案する。

  5. 富ヶ谷ランプ大規模拡幅工事における止水凍土の温度管理
    北川 貴由 大舘 良吉 折本 文晴 小椋 浩

    太径パイプルーフと止水凍土を併用した富ヶ谷ランプ工事において、解体時と長期にわたる維持期間の中での最適な凍結運転を検討し、その実施を行った。パイプルーフ両端部以外を一般部と呼び、この部分では止水を目的とした温度管理を行った。直線パイプルーフからなる上半部と曲線パイプルーフからなる下半部について、その形状の違いと施工時期のずれからそれぞれ管理値と管理方法を設定し、また現場の進捗状況に応じて柔軟に対応した。最後に当現場では実施しえなかった、一般部とパイプルーフ両端部でブライン循環系統を分け、一般部に高温ブラインを循環した場合の理想的な温度制御も提案する。

  6. 不規則要素を取入れた2次元要素の分割法と熱解析の改善
    松岡 啓次

    地盤凍結や地盤熱利用等の熱解析は、解析領域が一般的に複雑であるので、差分法を用いた数値計算法が使用されている。この場合、計算領域を多数の要素に分割する必要がある。要素が小さい(要素数が多い)程計算精度が良くなるが、計算時間が長くなる。例えば、凍結管付近の温度分布や凍結範囲は精度良く求めたいが、凍結管より離れた部分の温度分布の精度が荒くても良い場合、凍結管や鋼管(鋼管併用凍結の場合)付近の要素を小さく、離れた部分では要素を大きくすれば、要素数が少なくなり、計算時間が短く合理的な解析ができる。
    2次元解析では、要素は基本的に長方形、正方形であるが、要素の大きさが変化する部分では、三角形、四角形(長方形でない)の不規則要素で分割せざるを得ない。不規則要素を取入れた2次元要素の分割方法や考え方について述べる。この方法により,鋼管併用の凍結現場の要素分割を行い、それを用いた熱解析例を示す。

  7. 凍土とモルタルとの凍着せん断強度実験
    隅谷 大作 中谷 行伸 久門 義史

    凍結工法における凍土と構造物との必要凍着面積の検討や凍着面の維持管理方法の合理化を図る目的で、これまで鋼製構造物を想定した鉄材と凍土との凍着せん断強度を調べてきた。本稿では、コンクリート構造物を対象とする施工を想定して、砂凍土および粘土凍土とモルタルとの凍着せん断実験を行った。
    まず、凍土からモルタルを引き抜く実験から、凍着せん断強度の温度依存性を調べた。次に、凍着面に垂直応力を作用させる実験から、凍着せん断強度の垂直応力依存性を調べた。最後に、既往の研究結果との比較から、モルタルと鉄材における凍着せん断強度の相違、凍着せん断強度と凍着引張強度の関係について考察を加えた。

  8. 円板型塩分含有凍土の降伏について
    伊豆田 久雄 生頼 孝博 谷本 親伯

    塩分含有による凍土の曲げ降伏強度の低下が、シールド機発進や到達防護凍土壁をモデル化した円板型凍土にどの程度影響するかを調べるために、円板型塩分含有凍土の載荷実験を行った。塩分含有粘土凍土では、塩分による円板型凍土の降伏圧力の低下は直方体型での曲げ降伏強度と同程度であり、塩分を含まない凍土で適用性が確認されている降伏圧力推定法による値とほぼ一致した。一方、塩分含有砂凍土では、降伏圧力の低下は曲げ降伏強度より緩やかであるとともに、推定法による値よりも大きかった。発生クラックの分布状態からこの原因を円板型塩分含有砂凍土の変形に伴うドーム型化にあると推定し、有限要素解析と塩分含有砂凍土のせん断強度特性からドーム型化した凍土の降伏圧力の説明を試みた。

  9. 小規模地下構造物の地震対策等の補助工法~簡易な凍結工法の開発~
    小西 康彦 庄野 貴英 伊豆田 久雄 谷 浩明 高橋 和雄

    既設小規模地下構造物の老朽化対策や地震対策に伴い、地下水位以下を部分的に開口する必要が生じる場合、これまでは地盤改良により地盤の崩壊を防止して対応する場合が多かった。しかしながら、地盤改良は地下水の汚染など環境に悪影響を与える場合があることなどの問題があった。
    そこで筆者らは、地震時の液状化に伴うマンホールの浮上を抑制する装置を開発する過程で、元の地盤にもどる環境にやさしい工法として「簡易な凍結工法」を開発し、実証実験を行いその効果を検証したので報告する。

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精研技術報告集 No.08 2008

  1. 高気密室における室圧変動の制御に関する検証実験
    増子 久士 小谷 裕則 小川 晃弘

    高気密室では、給排気の僅かな変化でも室圧が大きく変動する。本報告では、前室2室および実験室から なる実物大の高気密室を建て込み、実験室に設置した2台の安全キャビネットの風量変化および前室のドア 開閉に伴う室圧変動を抑制する検証実験をおこなった。安全キャビネットからの排気風量の変化に対して、 室圧制御方式として、実験室からの排気を変化させる変風量方式とダミーダクトから変化分を補償する定風 量方式とした。試験結果から、定風量方式のほうが室圧安定に優れていることを示した。次に、定風量方式を 採用して、ドアの開閉および他機器への影響に関するマニホールド干渉実験から、いずれにも良好な制御性 が得られることを示した。

  2. 室内発生トルエン濃度の実測による濃度解析手法の検証
    香月 達弘 奥 俊彦

    数値流体力学を用いた濃度解析手法を検証する目的で、揮発性有機化合物(以下VOCとする)であるトルエ ンを扱う施設でトルエン濃度の実測を行い、濃度解析手法の妥当性検証を行った。その結果、濃度の実測値と 解析値は相対的な傾向が一致しており、濃度分布の傾向を捉える用途で実用可能であることを確認した。

  3. 冷風発生装置の設置による工場作業環境の改善-空調市場開発への提案-
    水上 宣広 天野 哲雄

    大空間の工場では酷暑で作業環境が40℃を超える事業所も少なくない。空調設備が導入されない理由は、一般空調温度まで冷房すれば設備が大型となり、イニシャル及びランニングコストが高いためである。本格的な空調設備を導入せずに工場内排熱形のスポットエアコン又はルーフファン等での換気で対応しているのが現状である。 そこで、この様な顧客へイニシャル及びランニングコストの安い水の蒸発潜熱を利用した大風量の冷風発生装置の導入を提案し、新しい空調市場の開発を行ったのでその概要を報告する。

  4. 商品販売における伝票処理IT化と情報戦略への活用
    上田 保司 香月 達弘 堀野 教之 城戸 信康 堀田 保昭

    当社では、営業部門の各種伝票をオフィスコンピュータに入力して、月次財務資料を作成してきた。しかし、この方法では、伝票手書きや入力専任者配置など事務コストがかさむ、販売実績等の即時閲覧が不可能、蓄積情報の分析は専用プログラム開発が必要なため手軽に行えない、などの問題点があった。
    これらの問題点を解消するため、当社の日立商品販売グループを対象として、伝票をPCで処理するITシステムを自社開発した。このシステムは、入力方式の改善による手書き廃止、保管伝票の電子化、販売状況の即時閲覧などによって、事務コストを削減できる。また、データベース方式の採用によって蓄積情報の分析を手軽かつ自由自在に行えるため、営業戦略の立案に活用できる。さらに、空調診断ツールへの拡張や、当社全部門での顧客情報共有など、今後の発展的な活用も視野に置いている。

  5. 海底トンネル地中接合凍結における事前安全性評価
    (東京電力横浜火力発電所G07048アクセス線新設管路工事)
    内田 達也 富田 一隆 大舘 良吉

    労働災害が発生してから、その防止対策の不備、欠陥が指摘されたり、盲点が摘出されるというパターンが繰返されている。建設工事における労働災害においては、特に計画段階における安全対策の不備が災害発生の大きな要因となっていた。
    このため1982年に、建設工事のなかでも労働災害の発生頻度が高く、かつ、重篤な災害となるケースの多いトンネル建設工事に対する事前安全性評価(セーフティーアセスメント)の手法について、当時の労働省が技術指針として公表している。
    凍結工法は、凍土という‶熱によって変化する特殊な物性″を扱っている関係上、施工計画段階における安全対策の不備がトラブル・事故に繋がる可能性がある。凍結本部では東京湾横断道路トンネル工事において元請方の強い指導で初めて事前安全性評価の手法を採用した。しかしながらその後は、ほとんどの現場が元請方の安全対策手法に従っており、この事前安全性評価を採用したのは数現場のみであった。2009年度目標で、「事前安全性評価を全現場で採用・確立すること」を掲げ実行している。
    本稿では、横浜火力発電所の海底地中接合工事を凍結工法で施工するに際して適用した事前安全性評価手法を紹介し、検討した内容とその結果を報告する。

  6. 接続防護凍結工の設計における三次元CAD適用方法の改善
    馬道 佳代 野木 明

    凍結工法は、今まで、シールド発進防護のように比較的形状が単純なケースでの利用が多かったが、近年、大深度においても信頼性の高い均一な地盤改良ができるという、凍結のメリットを生かした地中での接続防護工事に係るものが大きなウエイトを占めるようになっている。
    接続防護凍結工の設計時に外的条件として与える情報は、シールド機、管渠等の形状、深度方向の接続ずれ、交差角度、接続勾配、シールド機の離れなどとなるが各々の位置関係が複雑である。三次元CADを利用することで、それらの位置関係を容易に把握することは可能となるが、部品設計が主体の汎用CADでは、我々が主目的とする凍結管長さを求める事ができない。そこで、凍結設計に適用できるように工夫した凍結管長算出ツールを作成した。
    その結果、外的条件を変更する時には数値入力のみで適切な凍結管長さや本数を半自動的に決定することが可能になった。尚、各凍結管の先端凍土同士の重なり具合をチェックすることにより凍土の閉塞性を確認できる機能も有することができた。適用事例を含め、紹介する。

  7. ヒートパイプを用いた自然冷熱エネルギーによる凍土壁造成の熱解析
    吉田 聡志 伊豆田 久雄

    寒冷地の自然冷熱エネルギーの利用は、地球温暖化防止に加え原油価格高騰への対応策としても有益であり、いろいろな利用方法の検討が北海道などで進められている。ヒートパイプを用いた自然冷熱エネルギーで造成する凍土壁については、過去の実験1)などにより技術的には確立されており,また凍土壁の適用対象としては、既に実用化されている食料低温貯蔵2)の他に、止水、土留め、環境対策などにも利用することが期待される。
    本稿では、北海学園大学により2005~2007年にかけて札幌郊外の泥炭地で行われた実物大凍土壁造成実験で計測されたヒートパイプ周辺地盤温度変化を用いて、熱解析による造成凍土壁形状の推定手法を検討する。さらに2007~2008年の冬季には、計測された温度データと熱解析結果との比較に加えて、現地盤の掘削および測量を行い、凍土壁形状や厚みの推定手法の検証を行う。また、検証された熱解析設計手法を用いて、地盤や地域(寒さ)が異なる場合に造成される凍土壁の厚みを推定する。

  8. 凍土中の不凍水分量算定式の提案
    松岡 啓次

    地盤凍結現場で運転を停止した時、凍土内温度の実測値は、凍土の氷点温度で全ての潜熱が発生するとした解析値に比べ、温度上昇が遅い場合がある。この原因として不凍水の影響があると考えられる。凍土厚を制御する場合、測定温度を基準にして運転制御をするには、不凍水分量を把握する必要がある。文献の不凍水分量の実測データから、不凍水分量を推定するための算定式を導出した。この式から、塩分濃度、細粒分混合率、温度の任意の値に対して不凍水分量が決められる。現場測温の実測値と不凍水分量を考慮した地盤温度の熱解析値との比較を行い、両者が良く合っていることから算定式の妥当性を確認した。地盤温度の熱解析に実用できる。

  9. 凍着実験に基づく凍着維持安全性評価法
    隅谷 大作 櫻木 秀孝

    円形構造物を対象とする凍結工法を想定して、曲面での凍着維持条件を調べてきた。本報では、凍土と鉄材との曲面凍着実験と凍着面の応力解析を基に凍着破壊判定式を導出し、これを取り込んだ凍着維持安全性評価法を提案する。また、この評価法から力学因子が凍着維持に及ぼす影響を調べ、さらに、この評価法を凍結現場モデルに適用し、幾つかの施工条件が凍着維持に及ぼす影響を評価した。

  10. 鋼管間止水凍土の凍着維持に関する研究
    森内 浩史 上田 保司 生頼 孝博

    地下構造物を構築する際、鋼管で荷重を受け持たせ、鋼管間の止水を凍土で行うことが考えられる。本研究では、止水を保つために最も必要な凍土と鋼管との凍着維持条件を調べた。2本の鋼管と凍土とを組み合わせたはりの短期曲げ実験を行い、凍着破壊荷重と凍土温度および土質との関係を調べた。その結果、それらの影響は少なく、高温かつ薄い凍土でも凍着維持が可能であることを示した。また、工期の長い現場で凍土が長期間曝された状態を想定した定荷重下での曲げクリープ実験も行い、鋼管との凍着が維持できれば、凍土のクリープ変形は抑制されて破壊には至らないことを明らかにした。最後に、現場モデルの応力解析に基づいて、掘削中の鋼管露出は極力少なくするべきであることを示し、鋼管埋設精度や支保間隔の管理に関する留意点を提示した。

  11. 地盤凍結膨張に関わる技術用語とその取扱い
    生頼 孝博 上田 保司 松岡 啓次 山本 英夫

    人工地盤凍結において実用的に用いられている凍結膨張に関わる主要な技術用語の定義を確認した。凍結体積膨張率と線膨張率、凍上力と凍結膨張圧、凍結膨張圧と凍結土圧の相違点をできるだけ明確に示し、熱流方向凍結変位率を新たに加えた。また、それらへの応力や土質などの影響因子依存性をこれまでの研究成果に基づいて概説した。次に、地盤凍結工法の施工現場で実用している地盤変位と発生土圧予測法の現状を紹介し、実用上の留意点を示した。最後に、凍結面への水分移動を伴う地盤の変位と応力の数値解析における条件設定などの取扱い上の要点について触れた。

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精研技術報告集 No.07 2007

  1. 空気搬送系の非定常熱解析による搬送空気の温度変化予測と設計への利用
    香月 達弘

    産業用空調設備では、風量や温度などの空調条件を設定変更した後、給気が設定した状態になるまでの時間遅れが問題となる場合がある。今回、空気搬送系を構成する部材の熱容量を考慮した非定常熱解析をツール化したことにより、搬送空気の温度変化予測を可能とした。本報では、空気搬送系を構成する部材の熱容量を考慮した搬送空気の非定常熱解析手法を提案すると共に、本手法の産業用空調および一般空調での設計利用例を示す。

  2. チリングユニットを用いた冷却システムの水温変動予測手法と熱源制御設計への利用
    香月 達弘

    冷却システムにおいて、熱源の水温制御方法や制御目標値が適切でない場合には、負荷への供給水温が設計意図と異なる範囲で推移したり、激しく変動を繰返す可能性がある。冷却システムの品質向上を図るためには、ハード面の適切な設計に加えて、水温制御方法や制御目標値などソフト面も適切に設計し、設備に合った調整を行う必要がある。 今回、チリングユニットの主な水温制御方法である段階制御と連続制御について、制御用水温に対する熱源運転容量を経時的にシミュレーションすることで、冷却システムの要所の水温変化予測を可能とした。本報では、冷却システムの水温を経時的に予測する手法を提案し、空調用と産業用の各冷却事例について、水温制御方法の違いによる特徴を整理した。また、本手法の利用例として、プロセス冷却におけるクッションタンク保有水量の設計例、空調用冷却システムにおける熱源の台数制御方法と水温制御方法の設計例を示した。

  3. 外気有効利用による省エネ効果に関する検討
    岸本 悟

    本報ではまず、外気風量を増加させることで外気負荷が減少する室内外の空気条件と、その条件によって変わる最適な外気風量を求めた。次に、外気風量を年間一定とする通常の空調を行った場合と、室内外の空気条件によって外気風量を制御して空調を行った場合について年間エネルギ消費シミュレーションを行った。その結果、一般空調の場合では年間エネルギ消費量が8.7%削減されるという結果が得られた。恒温恒湿空調の場合は一般空調の場合とは違い、年間エネルギ消費量は増加するという結果が得られた。

  4. 50ton ロール立脚装置
    米田 裕次 箕 晃義

    ヤマウチ株式会社鹿沼工場殿では、製紙機械、印刷機械に用いられるロールの表面にウレタンライニングを行っている。ロール(鉄心)を水平にした状態では均一にウレタンゴムの層を形成できないのでロールを垂直にしてから、ウレタン層を形成している。この時、ロールを水平から垂直に立てる機械が立脚装置である。ヤマウチ株式会社鹿沼工場殿には、重量が40tonのロールまで対応できる立脚装置を昭和55年に納入している。しかしながら製紙機械、印刷機械の高速化につれてそれらのロールも次第に大きくなり40tonを超えるロールも出現してきたので、今回新たに50tonのロールを垂直に立てる能力を持つ立脚装置を納入する事となった。

  5. 高松塚古墳墳丘冷却の施工方法と温度制御
    吉田 聡志 廣川 修一 仁田 政孝 後藤 耕司 伊豆田 久雄 石崎 武志 三浦 定俊

    奈良県高市郡明日香村にある高松塚古墳は、7~8世紀頃に築造された二段円墳で、墳丘は版築(はんちく) で築かれた特別史跡である。
    壁画発見より約30年経過した2001年に取合部、石室内にカビが発生し、2002年には壁画近傍に黒色の汚れ が確認される事態となった。
    以下は、石室解体までの当面の生物対策とし採用された高松塚古墳墳丘の冷却業務について、1)施工方法、2)墳丘の冷却方法に関する事前検討、3)冷却中の墳丘の温度変化と熱解析結果との比較について報告するものである。

  6. 等圧が作用する両端固定の薄肉円筒シェルの近似解とその応用
    山本 稔 櫛田 幸弘 富田 一隆

    本研究では、径に対する長さの比が小さく、円筒シェルとして設計した方が好ましい場合につき、凍結工法を対象にした理論的解析手法を検討している。まず、理論解の得られる等圧を受ける場合について解を誘導してその性質を吟味した。これを元に適合性の高いあてはめ式を模索し、近似解を求めて理論解と比較してその精度を検証した。ついで理論解の得られない種々の荷重条件下のあてはめ式を等圧の場合のあてはめ式を元に作成して適合性を確認し、近似解を求めて変位・応力の近似計算を可能とした。

  7. 砂中央配置型合成凍土梁の実験結果の検証
    姜 仁超 山本 英夫 松岡 啓次

    本報告では、梁の理論解析とFEM解析を行い、砂中央配置型合成凍土梁の三等分点荷重曲げ実験結果である砂長と最大荷重の関係を検証した。梁横断面応力分布を照査することにより、砂長が80mmまでは曲げ破壊、80~100mmでは曲げとせん断が同時破壊、100mm以上ではせん断破壊であることを検証した。さらに、等分布荷重を受ける単純支持砂中央配置型合成凍土梁の横断面応力分布を照査し、破壊類型、砂長と最大荷重の関係を明らかにした。

  8. 海外における凍結工法施工事例調査と我が国との比較分析
    上田 保司 徳原 永治

    我が国における凍結工法は、これまで国内を対象とした設計施工が主であったが、近年、海外での設計施工や協力依頼などが増加する傾向にある。一方、凍結工法は海外においても欧米を中心として盛んに行われており、今後、市場の国際化につれて、これら欧米企業との競合や技術協力の可能性が考えられる。本報では、1970年代以降に海外企業が行った凍結現場の事例調査を行った。まず、施工地域や工事規模など、海外市場全般に関しての集計分析結果を示した。次に、設計施工技術について、我が国との共通点や相違点を整理した。最後に、施工目的を分析し、我が国

  9. 凍土の変形係数に関する実験的研究
    上田 保司 生頼 孝博 田村 武

    鋼管など他部材との合成体凍土の構造解析への適用をねらいとして、圧縮および曲げ実験から砂および粘土凍土の変形係数を調べた。まず、圧縮変位から求める変形係数は供試体端部の乱れの影響を受けて過小評価であることを示し、この影響を排除する方法を提案した。また、圧縮および曲げ実験について、変形係数に影響を及ぼさない供試体寸法の範囲を示した。続いて、幾つかの影響因子を変化させた実験から,ひずみ速度および乾燥密度が変形係数に及ぼす影響は小さく、圧縮と曲げとの変形係数の差も少ないことを示し、変形係数を温度との関係式で表すことを提案した。最後に、合成体凍土の破壊や凍着切れを扱う弾塑性解析用に、応力-ひずみ曲線のバイリニアモデル化に基づいて、凍土の構成式を提示した。

  10. 土の凍結線膨張率を取り込んだ3次元地盤変形解析
    上田 保司 生頼 孝博 田村 武

    凍結工法を行う際の凍結膨張による構造物変位への対策工を、現行よりも合理的に行うためには、地盤変形予測の精度向上が不可欠である。本研究では、予測精度向上のために、三軸凍上実験式に基づく土の凍結線膨張率を取り込んだ地盤変形解析法を提案した。凍結領域内における熱流方向の異なる各領域毎の凍結線膨張率を、凍土成長時期および凍結管の配置に対応した2種類の冷却面形状を用いて計算し、3次元弾性FEMに適用した。この方法で凍結管の設置方向が異なる二つの現場を解析し、計測値との比較から解析精度を確認した。また、熱流方向にのみ凍結膨張するとした解析、等方膨張するとした解析とも比較して、本解析の有効性と妥当性を検証した。

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精研技術報告集 No.06 2006

  1. 光触媒方式を用いた実験動物施設の排気脱臭法
    岡本 秀幸 上野 俊信

    水が水素と酸素に分解する光合成反応の一種である「本多・藤嶋効果」が1971年に報告されて以降、光触媒物質の代表とされる酸化チタンの有益な効用である、強い酸化作用と超親水化作用を利用した技術開発が活発に行われ、多方面での商品化が図られている。本稿では、改正悪臭防止法の施行により都市型公害の典型である悪臭対策が求められる実験動物施設からの排気対策としての、酸化チタン光触媒を用いた脱臭設備の計画、導入事例を報告し、その性能と今後の課題について述べる。

  2. 気流解析法を用いた局所負荷の処理方法の違いによる温度分布評価
    奥 俊彦

    通常、空調設備設計では熱源容量は負荷計算結果により決定されるが、実際にはタスク域(作業領域)が所定温度となればよいケースが多く、このようなケースで室内温度を1つの温度のみで表す負荷計算を用いると、過剰な熱源容量の機器を選定する可能性が高い。
    気流解析を用いると室内の温度分布を把握できるため、タスク域のみが所定温度となる適切な熱源容量の機器を選定できることになり、特に大空間空調や大きな局所負荷が見込まれる設備に対しては省エネ提案できる可能性がある。
    本報は、既開発の気流解析手法を設計時の省エネ提案に応用することを目的とし、熱負荷の大きな内部物体を有する室内モデルを気流解析し、室内温度分布の把握評価を試みたものである。熱負荷の処理方法の違いによるタスク域の平均温度を比較した結果を示し、省エネ化のために得られた知見を述べる。

  3. 熱源機器特性を考慮した熱源制御によるエネルギ消費量の計算手法
    香月 達弘

    熱源種類別に一般化した能力特性、エネルギ消費特性、熱源容量制御考慮の部分負荷特性を用いて、外気状態および熱負荷変動に応じた熱源機器の台数制御を行い、熱源機器の年間エネルギ消費量を推定する計算手法を示した。更に、制御方法によって、エネルギ消費量がどのように変るのかを利用例を用いて示し、考察を加えた。

  4. ポンプ及び送風機特性を考慮した変流量制御によるエネルギ消費量の計算手法
    香月 達弘

    搬送機器のエネルギ消費量は、その制御方法によって大きく異なるため、的確な省エネリニューアル提案を行うためには、制御を考慮したエネルギ消費の定量化が必要になる。本報では、搬送機器のうち、特に空調設備に使用されるポンプと送風機の特性を考慮した変流量制御によるエネルギ消費量の計算手法を示すと共に、制御方法により、エネルギ消費量がどのように変るのか考察を加えた。

  5. 自動搬送機高速化と実機試験
    角谷 徹 米田 裕次

    顧客へ環境にやさしい製品を提供することを目的として『エコプロ05計画』をスタートさせ、開発項目を検討した結果、産業システム部の重要顧客の1つに自動車メーカーD社があり、自動搬送機は重要な商品のひとつであること、また自動車の生産効率を上げるため、搬送機の高速化が要求されていることから搬送機の高速化に取組むことに決まった。搬送機を高速化するにあたり、D社にアンケートを取り、アンケート結果を織り込んだ高速型の昇降装置と走行装置を設計し、実機を試作して耐久テストを行なった。

  6. 横断面及び縦断面に平行な砂と粘土の互層凍土梁の室内曲げ実験
    姜 仁超 山本 英夫

    互層凍土の力学特性を把握する目的で、砂と粘土からなる直方体互層凍土供試体を用いて三等分点載荷曲げ実験を行った。前報では、梁の上下面に平行な互層凍土梁(合成凍土梁(Ⅰ))の結果を示した。本報告では、横断面に平行な互層凍土梁(合成凍土梁(Ⅱ))、縦断面に平行な互層凍土梁(合成凍土梁(Ⅲ))の結果を示す。合成凍土梁(Ⅱ)の粘土中央配置型の最大荷重が粘土凍土の強度に支配され、粘土凍土梁と同じとなり、砂中央配置型の最大荷重は砂が荷重スパン内に収まると粘土凍土梁と同じとなるが、砂が荷重スパン範囲を超えて長くなるほど最大曲げ荷重が直線的に大きくなることがわかった。また、合成凍土梁(Ⅱ)の引張縁中央部と層境界面ひずみが、砂と粘土の配置と長さに影響を受けることを示した。合成凍土梁(Ⅲ)は、砂と粘土が等価変形し、等価砂凍土梁の変形挙動とほぼ一致することが確認された。

  7. 鋼管間止水凍土はりのクリープ破壊について
    森内 浩史 上田 保司 生頼 孝博

    では凍土による止水維持条件を把握するため、凍土の破壊または凍着切れが生じるまで荷重を増加させた鋼管止水凍土はりの短期の曲げ実験を行ってきた。しかしながら、工期の長い現場では定作用荷重下で止水凍土が長期間開放状態に曝されるため、凍土のクリープ破壊や、低ひずみ速度による凍着強度の低下に伴う凍着切れが生じることが懸念される。
    本稿では、鋼管間止水凍土はりに定荷重を作用させた曲げクリープ実験を行い、変形と破壊を調べた。その結果、凍土のクリープ変形は鋼管との凍着によって抑制されるため、凍着切れが生じない限り凍土のクリープ破壊には至らないことがわかった。また、凍土と鋼管との凍着切れが生じても鋼管により凍土のたわみが抑制されるため、クリープ破壊は凍土単体の場合よりも生じにくいことを確認した。さらに、凍着強度のひずみ速度依存性に基づく鋼管間止水凍土のクリープ安全性判定法を提示した。最後に、凍着強度を増加させることで凍土のクリープ破壊の危険性を小さくできることを示した。

  8. 砂質土の凍上性判定法
    隅谷 大作 上田 保司 生頼 孝博

    砂質土に含まれる細粒分(シルト、粘土)がわずかであれば、凍結膨張はほとんど生じないため、凍結膨張対策を行わないのが通常である。しかし、過去の凍上試験において、細粒分の含有がわずかであるにもかかわらず、吸水を伴う大きな凍結膨張を示した砂質土が幾つかあった。
    そこで、本報では、吸水を伴う砂質土と凍結膨張がほとんど生じない一般的な砂質土とを見分けるための判定法を検討した。まず、一次判定として、過去の凍上試験結果が蓄積されたデータベースを砂質土の細粒分に着目して検索し、その結果に基づいた判定基準を示した。次に、二次判定として、細粒分の含有量を変化させた試料土による凍上実験結果から、凍結の際に生じる吸排水の予測式を導出し、さらに、現場への対応として、隣接粘性土層の凍上性を考慮して拡張した。最後に、砂質土の凍上性判定法をまとめて提示した。

  9. 両端固定の円弧アーチ凍土の応力とたわみの解析
    加藤 哲治 伊豆田 久雄 森 保史

    近年、地盤凍結工法で地下構造物などの建設にアーチ構造の凍土を採用しようとする動きが出てきた。アーチ構造に関しては、薄肉モデルの計算式や計算ソフトは多数見られるが、それらの計算式や解析ソフトを用いて計算すると、答えが一様でなく、どれを信用して良いのか分からない状況にある。 そこで, 双曲線公式に基づく両端固定円弧アーチの応力式とたわみ式を導出し、同時に、鉛直方向4点集中荷重の簡易な室内凍土実験によって理論式の適用性を検証した。また、その研究成果をまとめ、設計計算に使用できる計算式として整理したので報告する。

  10. 凍土中の不凍水分量特性とその凍土の曲げ強度への影響
    伊豆田 久雄 生頼 孝博 谷本 親伯

    Unfrozen water content (UWC), which affects the mechanical behavior of frozen soil, was investigated over a continuous temperature range using an isothermal adiabatic calorimeter。The employed soil materials were fine sand、clay and a mixture of fine sand and clay。Water, with or without NaCl, was added to the soil materials。 Specimens were obtained by freezing the saturated soils rapidly。The UWC increased with salt concentration and content of fine soil particles。A temperature rise increased the UWC in all frozen soils。A rapid increase in UWC was observed around the eutectic point of saline frozen sand。However, the rapid increase was not observed for saline frozen clay。Total UWC was divided into UWC in brine and absorbed UWC。It was found that the UWC in brine decreases with the content of fine soil particles。Then、the flexural strength of frozen soils was examined for various characteristics of UWC。The dependence of flexural strength on salt concentration was agreement with the dependence on UWC in brine, and the dependence of flexural strength on the content of fine soil particles was in agreement with the dependence on absorbed UWC。The flexural strength of frozen soils, including those containing both salt and fine soil particles, was not determined by the total UWC, but predominantly by UWC in brine。

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精研技術報告集 No.05 2005

  1. 冷却塔を用いたフリークーリングシステムの設計手法
    香月 達弘

    外気湿球温度より高い温度域の冷却用途がある場合、冷却塔を利用することで大きな省エネルギ効果が見込める。冷却塔を用いたフリークーリングシステムで、省エネルギ提案をするための各種削減効果(エネルギ消費量、CO2排出量、ランニングコスト)、および最適な熱源容量を選定するための設計方法を示した。また、フリークーリングシステムで更に省エネルギを図るための留意点についての考察を加えた。

  2. 標準k-ε乱流モデルによる室内気流、温度及び濃度解析手法の開発
    Boris Zivkovic 奥 俊彦

    一般的に室内の気流は乱流状態にあり、その流れ性状を正しく捉える為には乱流解析が必要となる。そこで、空調分野において広範囲に用いられる標準k-ε乱流モデルに基づく乱流気流解析手法を開発した。本報において、その解析手法を紹介するとともに、検証の為に行った幾つかの解析例を示す。また、室内に発生した浮遊微粒子の拡散性状の解析手法も開発し、ここで報告する。

  3. 風速・温度解析による工場内の作業環境評価事例
    奥 俊彦 Boris Zivkovic

    某工場における室内の風速・温度分布の面から工場内の作業環境の評価を目的として、独自に開発した解析手法を用いて乱流気流解析を行った。本解析に先立ち、熱負荷の少ない小部屋で風速の測定を行い、解析との比較から、角度のある吹出口での風速の与え方について妥当性のあるモデルを探り、解析モデルを決定した。工場内から熱負荷で特徴のある箇所を選定し、冷暖房時の風速と温度について解析した。本報では、その解析結果より、作業環境について得られた知見を報告する。

  4. 長尺物鋼材反転装置の設計
    米田 裕次

    大きく重い物体を反転する(90°又は180°引っ繰り返す)作業は、手間が掛かる上に非常に危険を伴う作業である。反転する対象物の形状や価格によってその方法は異なり、一般的には天井クレーン等を用いて吊り上げながら走行し、重心を移動させて90°反転する。金型等の四角い塊のような形状で、各面に突起物がついているような品物では、反転作業による破損の恐れがあるので2点吊の天井クレーンや地上設置の反転装置を用いる事が多い。今回、長尺物鋼材の反転作業に地上設置の反転ユニット2台で行うこととしたが、既存の反転装置は金型用のため速度が遅く、鋼材用には適さないので、専用の反転装置を設計、製作することとした。本稿では、①反転ユニット間隔の決定②駆動系の所要動力の算出と装置設計③荷重受けローラーの設計④制御設計に使われる荷重検出装置と可変速運転について説明する。今後同様の装置を設計する際の参考になれば幸いである。

  5. 接続防護凍結工事におけるトンネルの変形応力予測
    吉田 聡志 森 保史 富田 一隆 伊豆田 久雄

    大深度でのシールドトンネルと立坑等との接続工事の補助工法として、安全確実な凍結工法が採用されている。この接続防護凍結工事では、土水圧および凍結膨張圧によるセグメントと補強部材の健全性確保と、セグメントと凍土との付着(凍着)が重要である。そこで、セグメントと補強部材の変形と応力変化を、事前解析により予測することと、施工時にそれらを計測データから把握することが望まれる。本稿では、1)セグメントや補強部材の変形・応力変化を予測するために、ノーテンション(地盤バネが圧縮のみ有効になる)解析ができる汎用の平面骨組みソフト(FREMING Ver.12;富士通エフ・アイ・ピー製)を適用する方法(フレーム解析手法)を提案する, 2)3つの接続工事について、変形・応力変化の予測を実施し、計測データと比較することにより、提案する解析手法の妥当性を検証する。

  6. シールド到達後の地中温度異常とその対策
    新井 聡

    本工事は、神田川・環状七号線地下調節池(第2期)梅里立坑到達工事を地盤凍結工法により施工したもので、水害が多発する神田川中流域の水害に対する安全度を早期に向上させるため、環状七号線の道路下に調節池(内径12.5m)を建設し、洪水を貯留する施設である。第2期工事が完成すると全長は4.5kmに達し、貯水量は54万トンとなる。本稿は凍土造成期間中に地下水流によると思われる温度異常が起こり、その対策を講じたのでその対策について報告する。

  7. ガス切断作業時の凍土への熱的影響評価
    松岡 啓次

    地盤凍結工事の凍土掘削時、立坑やシールドトンネルの一部分をガス切断により、解体することが多々ある。ガス切断部は、一時的ではあるが鋼材の融点温度(約1400~1500℃前後)となり、鋼材の熱伝導により周囲に高温域が拡散する。これにより、凍土への影響がどの程度あるかを評価するための熱解析を行った。ガス切断部の考え方と取り扱い方法を示し、切断時の温度変化、凍土の解凍厚み、回復状況及び最大解凍距離などについて述べる。

  8. 鋼管間止水凍土の安全性に及ぼす力学因子の影響
    上田 保司 森内 浩史 隅谷 大作

    道路トンネルなどを地下に構築する際、パイプルーフ工法がしばしば用いられる。この工法では掘削時に鋼管間の止水を行う必要があるが、その方法の1つに凍土による止水がある。本稿では、鋼管間止水凍土の設計・施工を行う上での指針を得る目的で、幾つかの力学因子が止水凍土の安全性に及ぼす影響を調べた。まず、2本の鋼管間に凍土を凍着させた梁の曲げ実験を行った。その結果、凍着破壊が生じるときの荷重は温度や歪速度の影響をほとんど受けず、土質による相違もなかった。次に、現場規模のモデル解析を行い、掘削時に過大な鋼管露出は避けるべきこと、鋼管の埋設間隔および埋設精度の管理が重要であることなどを示した。

  9. 有効応力に基づく土の三軸方向への凍結線膨張率
    上田 保司 生頼 孝博 田村 武

    凍結中に応力が変化する場合の土の三軸方向への凍結線膨張率を、三軸応力下での凍上実験から調べた。その結果、特に拘束応力が小さい場合、凍結中の間隙水圧の低下に伴う等方的な有効応力の増加によって、熱流およびその直角方向への凍結線膨張率は小さくなることがわかった。また、熱流方向の凍結膨張圧によって、熱流方向への凍結線膨張率は小さくなり、直角方向への凍結線膨張率は大きくなった。さらに、凍結中の未凍結領域の圧密のために、軟質土における熱流方向への凍結線膨張率は、硬質土よりも小さくなった。凍結工法における地盤変形予測精度を改善するため、既存の三軸凍上実験式にこれら因子を取り込んで、凍結線膨張率をモデル計算した。この計算の妥当性を、実験値と計算値との比較から確認した。

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精研技術報告集 No.04 2004

  1. 冷却塔出口水温の算定方法と実測による検証
    香月 達弘

    従来、図表あるいは近似式より求められていた冷却培の出円水温を、冷却塔のエンタルピ基準総括容積伝熱係数を用いて算定する方法を提案し、夏期、中間期、冬期の冷却塔実測により妥当性を検証した検証の結果、冷却塔出口水温の実測値と計算値の誤差は4%未満で一致しており、この算定方法が妥当であることが確認できた。さらに、冷却培を主熱源として空冷チラーを併用させた冷却方式と、空冷チラー単独による冷却方式で、ランニングコストの比較を行い、要求温度30℃以上の冷却用途では、冷却塔を主熱源とした冷却方式により、空冷チラ一単独方式に対して50%以上のランニングコスト低減となることが分った。

  2. 固形製剤製造装置向けの空調
    上野 俊信

    固形製剤の生産設備の内、流動乾燥機とコーティング機についてはその両方に不可欠な要素設備として温湿度一定条件の給気供給設備が要求される。この設備計画での、一般空調設備と比較した特性と対応策を概説する。特に小風量機種は温度維持に特有の課題があり、納入事例での空調機の構造寸法や運転温度等の傾向分析を行い設計施工上の留意点を示す。また今後の動向としては研究開発用途の小風量・温度可変装置の需要があるが、その品質向上に向けた課題を報告する。

  3. 堺市庁舎・空調設備における設計変更と施工
    永田 弘美

    従来、諸官庁工事における設計図書の変更は、原則的に困難な場合が多い。今回、原設計を検討した結果、①空調機器類を原設計通りに設置することが困難であるとともに、メンテナンス・スペースが充分に確保できない、②電算機室系統の主要空調関連機器が信頼性に乏しい、など問題点が明確となり、設計変更を行った。工事が完了し、満足できる結果が得られたので報告する。主な内容は、経験から得られた官庁物件における設計変更の進め方、庁舎におけるシステムの役割を考慮した原設計の問題点と設計変更内容、加えて、設計変更によるランニングコスト削減効果である。

  4. 定常及び非定常の層流数値解析手法の開発
    奥 俊彦 Boris Zivkovic

    室内などの温度分布や気流分布を事前に予測することは、適切な空調設計を提供する上で極めて有益である。そこで、より快適な室内環境や省エネ空調設計の提案を目標に、定常及び非定常の層流数値解析手法を開発した。本稿では、その解析手法の概要及び利用性について報告する。開発したプログラムの妥当性を調べるために幾つかの問題を解き、文献と比較する。更に、定常及び非定常解析手法それぞれの解析例を示す。

  5. 電子納入伝票検収システムの構築
    板野 元太郎

    現在、多くの企業では、「業務処理の迅速化」という課題にITを活用している。
    設備工事会社の当社も、会社創業以来続いてきた紙ベースの納入伝票を電子媒体に置き換えて、毎月検収する多数の検収業務を迅速化する「電子納入伝票検収システム」を2003年4月に構築し運用を開始した。本報文ではシステムの概要と運用効果、更に今後の課題について報告する。

  6. 100℃を越える高温地盤での橋脚深礎杭工事に伴う地盤冷却工事
    新海 裕隆 徳原 永治 渡邉 恒方 松岡 啓次

    地盤温度が100℃を越え、地獄(温泉地で絶えず湯気が立ち、熱湯が吹き出しているところ)が点在している場所に橋脚の基礎杭を施工する場合、①遮断工(薬液注入工事)、②冷却工、③深礎工(掘削工・コンクリート打設工)の三工種の成否が深礎杭を安全に施工する為の重要なポイントとなる。本稿では冷却工の設計・施工について述べるとともに、冷却効果を検証し、課題・問題点の抽出を行う。

  7. 稼働中の電力洞道(275KV,154KV)への大断面接続防護凍結工事
    桜木 秀孝

    本工事は、名古屋駅に近接する牛島地区再開発事業の第1期工事として、地下約30mに現存する稼動中の電力洞道(シールドφ4.8m)に、超高圧ケーブルを引き込む新設洞道(4.8mH×6.7mW)を接続の為の地盤凍結工事である。地盤凍結工事としては、既設ケーブル(275KV×2本、154KV×3本)が内在し補強の施し難い条件下であることから、凍土でシールド全体を取り囲む大規模なものとなり、躯体の築造には、トレンチ工法が採用された。
    今回は、大規模であるがゆえ顕在化した、凍結膨張・解凍収縮による凍上・沈下の当初計画に含まれていなかった対策方法(地山抜取り、復元注入)についても報告する。

  8. FRP製凍結管の基礎試験による検討と課題
    北川 貴由 森 岩利 吉井 修

    近年新素材としてFRPが注目され、様々な分野で実用化されている。清水建設㈱と旭硝子マッテックス㈱からFRP管を凍結管として利用できないかという提案を受け、使用の際の基礎試験を行った。
    その結果、凍結管として使用する為には引張に対する強度が少ないので難しいが、ブライン配管・貼付凍結管・埋込凍結管には適応できることが分かった。

  9. チルド・ブロック工法の開発-汚染地盤撤去時の有害物質揮発抑制に関するモデル実験と設計法-
    吉田 聡志 新海 裕隆 伊豆田 久雄

    平成15年2月に土壌汚染対策法が施行され、地盤汚染による健康被害発生の防止技術が注目されている。チルド・ブロック工法(Chilled Block Method)は、汚染地盤から発する悪臭や水銀等の有害物質の揮発によるリスクの低減対策として開発した。
    施工方法としては、要求される抑制および封じ込めの度合いにより冷却レベルと冷凍レベルの2ケースを想定している。冷却レベルは地盤を部分的に凍結し、対象地盤全域の温度を5℃以下まで冷却させた状態で掘削撤去する方法であり、冷凍レベルは対象地盤の90%以上を凍結し、有害物質を封じ込めた凍土ブロックの状態で効率的に汚染地盤を撤去する方法である。

  10. 地盤改良材の室内試験データベースの構築と凍結性状の分析
    清時 健士 上田 保司

    凍結工法を施工する際、裏込め注入材やセメント改良土などの地盤改良材が凍結対象となる場合があり,必要に応じて凍上・沈下や凍結時の強度などの凍結性状試験が行われる。本稿では、過去に行われた地盤改良材の試験結果をデータベースとして構築し, 地盤改良材の種類・用途毎に検索して凍結性状を調べた。また、凍結現場に用いられる場合の留意点を考察した。

  11. 砂凍土の曲面凍着せん断強度に関する基礎実験
    隅谷 大作 上田 保司

    既設構造物間の拡幅を地盤凍結工法で防護する際、凍土と構造物との接触面(以下、凍着面)が、曲面の場合がある。その場合、凍着維持条件が不明なため、合理的な凍着距離(凍着面積)の決定ができない。
    今回、曲面での凍着を維持する条件を把握するために、砂凍土と鉄材とを用いた曲面凍着せん断実験を行った。まず、凍着面のせん断応力が曲面に沿って一方向のみに生じる実験を行った。供試体の破壊は、凍土のせん断破壊による場合と凍着切れによる場合があり、破壊荷重は前者の場合が後者の場合よりも大きかった。次に、凍着面のせん断応力が曲面に沿って相反する二方向に生じる実験を行った。すべての実験において、供試体の破壊は凍土のせん断によって生じた。凍着を維持する条件を調べるために、実験における凍土の内部応力および凍着面のせん断応力を解析し、実験結果との比較から、凍着切れが生じずに凍着を維持できる凍土の取付位置の存在を明らかにした。

  12. 粘性土と砂質土からなる互層凍土の室内力学実験
    姜 仁超

    粘性土と砂質土の互層地盤で凍土を造成する場合は、互層凍土の力学特性を適切に評価することが重要である。そのために、互層凍土供試体を用いた曲げ実験とせん断実験を行った。合成凍土梁の曲げ実験では、砂層の配置位置及びその層厚の占める割合が荷重とたわみ、中立軸移動、曲げ弾性係数、変形抵抗力に及ぼす影響を明らかにし、重ね凍土梁の曲げ実験との比較及びせん断実験結果から、互層凍土梁は合成凍土梁と見なすことができることを確認した。

  13. 凍結面の吸排水を考慮した地盤凍結膨張に関する数値解析法
    松岡 啓次

    地盤が凍結すると、膨張により凍結土周辺地盤の土圧増加と地盤変位が生じる。特に地盤が粘性土の場合、凍結時に間隙水が凍結面に吸い寄せられ、その発生量は大きくなる。凍結面への吸水量は、土固有の性質だけでなく、凍結速度、有効応力、地盤内の透水性等に依存している。本論文では、凍結面進行、凍結面での吸排水、吸排水に伴う有効応力の変化、土の圧密に関して、熱と間隙 水圧・土圧・変位を連成にした数値解析法を示す。
    室内実験をモデルとした本解析から求めた凍結膨張率は、実験値と良く一致した。本解析法は凍結膨張現象を伴う地盤の応力・変位解析に利用できる手法であるといえる。

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精研技術報告集 No.03 2003

  1. 産総研ナノ材料実験棟スーパークリーンルームにおける施工事例
    富塚 就彦 鈴木 正敏 高津 彰仁 鈴木 暁彦

    産業技術総合研究所ナノ材料実験棟のスーパークリーンルームの工事にステップアップ工程による工程、品質管理を行った。クリーンルーム委員会の設立によるステップアップ計画、使用材料の分析、施工要領の検討及び統一化を図り、施工から性能検証完了までの監理を行い、短工期の中で工事を完了する事が出来た。当工事の施工内容を報告し、今後のスーパークリーンルームの工事に役立てて行きたい。

  2. 動物飼育施設における年間消費エネルギ実測と分析
    小林 進 山本 英夫

    動物飼育施設における空調機器の消費エネルギと空調負荷の年間変動を把握し、開発済みシミュレーションプログラムの計算値と実測された消費エネルギとを比較して、プログラムの評価と妥当性を確認する目的で、空調機器の電力消費量、ガス消費量、空調ダクト内空気の風量、温湿度を年間通して測定した。その測定値をもとに、月毎の空調負荷、空調機器の消費エネルギ等を算出した。省エネ化の為に設置された水噴霧式全熱交換器(RAAロスコン)の回収効率も実測した。最後に、より省エネ化の為の、若干の検討を加えた。

  3. 飼育中における一方向気流換気システムのラック内温湿度環境
    香月 達弘 奥 俊彦

    これまで、実験動物飼育室における一方向気流換気システムのラック内温湿度環境の測定は動物の模擬負荷をラック内に配置して行われてきた。今回、実験動物施設で運用中の一方向気流換気システムで、飼育中におけるラック内温湿度環境を実測する機会を得た。本報では、実動物負荷および模擬負荷におけるラック内温湿度の測定結果を示すと共に、温湿度に関する一方向気流換気システムの性能を評価した。また、気流解析と実測値との比較による考察を加えた。

  4. 粘土凍土における固定アーチモデル実験およびフレーム解析との比較検討
    森 保史 吉田 聡志 北川 貴由 須藤 圭祐 伊豆田 久雄

    現在計画中の首都高速環状線や外環高速道路のランプ築造工事は注目される工事であり、都市圏の地下に大空間を築造する研究・開発は、大手ゼネコンをはじめとして盛んに推し進められている。大断面を100m近い距離で拡幅するランプ築造工事の場合、地上を占有せずに施工可能な凍結工法は、重要な要素技術として位置づけられている。このような拡幅防護工事では、「最小限の凍土で最小限の空間を防護する」という点からアーチ形状の凍土壁(以下アーチ凍土)が合理的である。しかし、奥行きの長いアーチ凍土の施工例はなく、アーチ凍土自体の変形特性を実験的に調べた事例も国内外で見当たらない。実際に、現場でアーチ凍土を計測管理する上でも、変形特性を知ることは重要である。以上の点から、1)モデル実験によるアーチ凍土の変形、強度特性の把握、2)フレーム解析との比較検討を行った。

  5. 二次元FEMによる曲線形粘土凍土の応力分布解析
    隅谷 大作 松岡 啓次 上田 保司

    既設構造物間の拡幅を凍結工法で防護する際に、曲線形凍土を用いた場合(以下、曲線凍結)の凍土の応力分布特性を、二次元有限要素法(以下、二次元FEM)によるモデル解析から調べた。
    まず、従来の凍結工法(以下、直線凍結)との比較を弾性解析により行った。曲線凍結の凍土内応力及び凍土と既設構造物との取付部(凍着面)の剪断応力は、直線凍結よりも小さいことがわかった。次に、曲線凍結において、凍土内に温度分布がある場合と、均一温度の場合との比較を弾塑性解析により行った。温度分布凍土の凍土内応力は均一温度凍土よりも小さかった。ただし、温度に対応する凍土の強度と凍土内応力との応力比で比較すると、温度分布凍土と均一温度凍土との間に大きな差は見られなかった。

  6. パイプルーフと止水凍結の複合工法における凍土の熱的検討
    松岡 啓次 生頼 孝博

    トンネル拡幅等の大断面を掘削する場合、パイプルーフと地盤凍結の複合工法が提案されている。パイプルーフで地盤荷重を受け、凍土でパイプ(以下「鋼管」とする)間の止水をすることにより、薄い凍土で土留め壁として利用しょうとするものである。凍結膨張の影響の軽減が期待できる一方で、凍土の造成や維持管理にこれまで以上の技術が要求される。
    そこで今回、凍結管は、鋼管内に設置することを基本とし、凍結管の配置やブライン温度変化による凍土成長の相違、掘削及び鋼管間の止水鉄板溶接時の加熱による解凍などの熱解析を行なった。熱解析は、二次元及び三次元の差分法を用いた。解析により、凍土内温度分布、鋼管との凍着温度、凍着長などがわかり、この複合工法の基本設計、また力学的実験及び解析の基礎資料に利用できる。

  7. 鋼管変形に伴う凍土の追従性把握実験
    森内 浩史 上田 保司

    パイプルーフ工法において、鋼管間の止水を凍土で行うことが考えられる。その実用化のためには止水を保つ熱的及び力学的条件の把握が必要である。現場の施工条件を想定した2次元差分熱解析結果に基づく「現場想定」梁の曲げ実験を行い、凍土がクラックや凍着切れを生じずに鋼管変形に追従するかどうかを調べた。また、比較のため、鋼管の全周を凍土で覆った「全周包含」梁と鋼管にのみ荷重がかかる「鋼管載荷」梁の曲げ実験も行った。その結果、凍着切れ時の歪(凍着破壊歪)を最大とする温度が存在した。また、パイプルーフ工法における鋼管の設計強度である許容応力範囲内では、凍土と鋼管の凍着は切れず、凍土にクラックを生じなかった。さらに、鋼管表面に突起や溝を設けるなどして凍着強度を増強することで、凍土の追従性を向上できる可能性があると推察された。

  8. FPAS工法の開発 -シールド直接到達工事におけるパッキン止水・マシンの回収-
    野木 明

    シールド工事の発進・到達時の工期短縮や安全性を改善する方法として新素材を立坑壁に用いた新工法が 各種考えられている。現状では、発進については施工上の問題を抱えながらも実績がついてきているが、到達 は推進完了後の止水性に難点があり採用は限られている。
    FPAS(the Freezing PAcking for Seal)工法は新素材を壁体に用いたシールド直接発進到達工法の一つである SEW工法の特に到達に焦点を合わせ、一連のシステムの中で凍結・解凍を利用したものである。ここでは、止 水の主体はパッキンであるが、到達時にパッキンの性能を損なうことなく、しかも到達後はスムーズに作動させ ることを目指して凍結・解凍を組み込んだ。
    本稿では、パッキン作動に関して行なった実証試験と引き続き施工した到達工事の概要を示し、それらの結 果を踏まえた標準設計について触れる。

  9. FRP材包含による凍土梁の増強効果に関する室内実験
    上田 保司 森内 浩史 生頼 孝博

    FRP材を包含した砂凍土梁の曲げ実験を行った。メッシュ状FRP材を用いた場合は梁の不均質、棒状FRP材を用いた場合は凍土との凍着切れによって、梁は破壊した。FRP材の包含によって最大荷重は単体の凍土梁よりも増加した。耐えうる最大荷重は、メッシュ状FRPの場合よりも棒状FRPの場合の方が大きかった。実験結果の構造解析から、FRP材と凍土との凍着強度を高めることで増強効果をさらに大きくできる可能性があり、また、引張側のFRP材数量を増やすよりも圧縮側にもFRP材を配置する方が増強効果を大きくできることがわかった。

  10. 解説:我が国に於ける人工凍土の利用研究
    生頼 孝博

    凍土の研究は、寒冷地の冬期凍結が建物や道路に及ぼす“凍上害”から始まった。その後、冷凍機や液化低温ガスによる冷熱で地盤を凍結させる状況が生まれ、人工凍土研究の必要性が高まった。自然凍土の研究成果が人工凍土研究に生かされたのは当然ではあるが、両者の凍土にはいくつかの条件の違いもあり、新たな研究の必要性も生じた。また、我が国では外国に比べて地盤が軟弱であり、地中温度も比較的高いという条件もあり、独自の研究が進められてきた。本稿では、凍土の持つ遮水性と強度特性を利用した人工凍土の研究成果を、課題発生状況と共に、概説する。

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精研技術報告集 No.02 2002

  1. 製薬会社研究棟に施工したANICON(動物実験)空調システム
    柳本 申二 浅市 征男 高橋 修

    動物飼育室の気流制御(一方向気流)システム『アニコン』は、昭和61年に動物実験業界に登場してから16年余りで64施設にラック台数で延べ2000台以上を納入し、好評を得ている。一方、給排気混合の無い水噴霧式全熱交換器『ロスコン』は、昭和57年にRCC型、昭和62年にRAA型を開発してから両型式合わせて現在まで63施設150台納入している。また、アニコンとロスコンの両方を組み合わせた『ANICON』空調システムは、前述の納入先の内22施設に納めている。ここでは、アニコンとロスコンの特徴を述べるとともに大阪市某製薬会社に納入したANICON空調システムの例を挙げ、導入経緯におけるユーザーの技術的評価とGLPへの対応、施工内容について記述する。

  2. 水噴霧式全熱交換器(精研ロスコン)における排気中のアンモニア成分の除去
    香月 達弘 中塚 正信 山本 英夫

    水噴霧式全熱交換器(商品名:精研ロスコン)の排気側スプレーを年間噴霧させて実験動物飼育施設などからのアンモニア成分を除去する方法についての実験を行った。アンモニア濃度、噴霧水量、噴霧粒径、処理空気温度、噴霧水のpHを因子とした実験の結果、処理空気のアンモニア濃度が2ppm(実験動物飼育施設の排気ダクト内のアンモニア濃度相当)の時のアンモニア除去率は、従来型ロスコンで25%であるのに対し、ロスコンの噴霧水量をL/G=0.3まで増加させることで分離型で67% 、直交型で60%、まで向上することを確認した。

  3. エアワッシャによるガス状汚染物除去及び熱回収システムの開発
    山本 英夫 香月 達弘 藤澤 修三 守屋 正祐 鍋島 泰 小田 久人

    半導体工場等で空調のために取り入れられる外気中に含まれるガス状汚染物(SOx、NOx、アンモニア等)を除去すると共に、排気から熱回収するシステムの開発を行った。エアワッシャに水循環式熱交換コイルを設置し、排気側に設けられる有害物質を除去する為のスクラバー噴霧水と中間熱交を介して排気から熱回収をおこなうと共に、噴霧水に加えてコイル表面の濡れを利用して効率的にガス状汚染物を除去しようとするものである。先ず室内実験で、エアワッシャ噴霧水の量、粒径、圧力等とガス状汚染物の除去性能と熱回収量を調べた。その結果を基にして、佐賀県の某半導体工場に設計・設置した実機で実測を行った。それらの結果から、噴霧量を通常用いられるエアワッシャの約1/5に減少させてもガス状汚染物除去率は80%以上得られ、熱回収効率は約50%となることが分かった。又、数値解析による熱回収シミュレーション手法を用いて省エネルギ量を求め、それに基づいて設備の単純償却年数を約7年と推定した。

  4. 空調設備における年間消費エネルギ予測法
    小林 進 香月 達弘 山本 英夫

    空調設備の省エネルギを提案する際には、空調運転に伴う年間消費エネルギを把握する必要がある。年間消費エネルギを求める方法として、先ず空調負荷を外気、躯体および内部の負荷に三分割し、これらが年間の気象(外気温湿度)の変動に対する相関関係を求めた。次にこれらの関係から熱源および補機類の全負荷相当運転時間を算出し、機器の定格消費エネルギを乗じて年間消費エネルギを求めた。今回入力及び出力を容易にしたこれら一連のプログラムを開発した。一般空調と実験動物関連施設やクリーンルームなどで多く採用される露点制御による空調にも対応できるようにした。また、冷却・加熱・加湿のための複数の機器による組合せ熱源も取り扱うことができる。外気の基本データとして標準気象データを用いた。本報では、消費エネルギを算出する手法および計算事例を示す。

  5. 反転クレーン技術とその実績
    米田 裕次 川嶋 勇 箕 晃義

    クレーンを用いて金型等の反転作業を行う場合、通常は主巻/補巻クレーンを使用する。たとえば10tの金型を反転する時に、10t/5tクレーンを使う。図1に二つのフックを用いた反転作業の例を示す。従来の主巻/補巻クレーンでは主巻、補巻二つのフックで反転作業を行うと①反転時の変動荷重に対し、補巻の能力が不足②主巻、補巻で速度が違う③同時動作できない(主巻、補巻インターロック)と云う点に係わる安全上、操作上、法規上の問題があった。
    反転作業を同じ容量の二つのフックで行った場合、つまり、10tの吊り荷を10t能力の二つのフックで反転するならば、上記の問題点①、②は解決する。しかし、同時動作出来るようにすると10t+10t=20t能力のクレーンが出来上がる。反転しようとする吊り荷の倍のクレーン能力となってしまう訳である。これではクレーンだけでなく建物も倍の強度が必要となり、経済性に問題が残る。特に、既存の工場に設置しようとする時には、全く余分な補強費用を強いられる事になる。そこで、同時動作時の吊上げ能力を半分に制限し、クレーン全体の能力を吊り荷の分だけに抑えようとしたのが反転クレーンで、既に、特許を取得している。

  6. 凍土を利用した冷熱蓄熱と回収の検討
    松岡 啓次 生頼 孝博

    凍土は遮水性と高強度の特性を生かして、従来、土木工事での仮設材として利用されてきた。今回、凍土の持つ潜熱を生かして、地盤中の冷熱蓄熱材として利用することを考えた。冷熱蓄熱としては氷蓄熱が実用化されているが、凍土蓄熱は、①地盤に蓄熱することで蓄熱タンクが不要になる、②冬期低温外気を直接または間接的に利用できる、という利点を活かせる可能性がある。
    凍土蓄熱及び回収についての差分法による数値計算を行った。冷却温度、地盤温度、地盤の含水比を考慮した冷却管群設による凍結効率(冷却熱量に対する潜熱蓄熱量の割合)を調べた結果、適切な条件下での凍結効率は60%を越える高い値が得られた。さらに、冷熱利用時の熱回収効率(冷却熱量に対する回収熱量の割合)について調べた結果、蓄熱潜熱に加えて蓄熱顕熱も回収できることから、条件によっては80%以上の値が得られることが分かった。冷却管の効果的配列や群設モデルでの蓄熱回収の経年変化についても検討結果を示す。

  7. 凍結を伴う差分熱解析法と三次元要素分割法
    松岡 啓次

    地盤凍結現場では凍土温度、凍土成長、地下水流の影響等の熱管理が重要である。その為には、地中温度降下を事前に予測する必要がある。熱解析は、差分法によって行うが、片山らの差分法では、ニュートン流に接する境界面や熱定数の異なる付近の要素分割、更に境界面の形状毎に式が多く、不便な点が見られるので、本稿で改良した差分式を提案する。また、現場の熱解析は、構築物、凍結管の埋設等が複雑であるため、三次元熱解析が必要であることも多く、三次元熱解析では、要素数が数百万~数千万あり、凍結管の位置、境界面位置等の入力が煩雑であり、非常に多くの手間を要する。そこで今回、簡易に入力できるように開発したので、要素の取り方、潜熱の考え方、差分式等について述べ、この方法の原理を概説する。最後に、現場の例を用いて具体的な要素分割手法を示す。

  8. 地盤凍結現場における地盤温度の実測値と三次元解析値との比較
    松能 功 折本 文晴 吉井 修

    東京湾横断道路凍結工事の際、二次元差分解析に基づく凍土造成シミュレーション法が開発された。これを用いた凍土管理は、それ以後の現場でも大いに活用され、地中温度降下予測をはじめ温度管理値の設定、凍土造成完了予測、維持時における凍結管間引き運転方法の決定などに役立っている。
    しかしながら、近年施工が増加している地中接合工事のように凍結管埋設形状が複雑な場合、二次元差分解析では偶角部などの計算値に誤差が大きくなり、施工管理が困難になることも多く、三次元差分解析による凍土管理の必要性が増していた。
    今回、弥生町復旧工事において、①凍結管埋設形状が複雑で、二次元的取り扱いが難しいこと、②接続すべき相手側の管渠内が湛水状態であり、これまでの手法では、凍着部分の凍土状況の把握が困難であること、③施工中に、揚水等による周辺の熱量状態の変化が発生することなどから、凍土管理上の種々の判断を正しく行うことができる手法が必要となった。そこで、三次元差分熱解析を行い、各測温点が施工中にどのように温度変化をするかを、より状況に合わせた条件で予測して、凍土管理を実施した。その結果、工事を無事に完了 することができた。
    本稿では、実施工における温度変化と三次元解析値より予想された温度変化を比較し、この解析法の有効性を評価するとともに、今後の留意点について述べる。

  9. 液体窒素方式による地盤凍結工法の実施-地下水流の存在する砂礫層における発進、到達防護-
    仁田 政孝 伊藤 武生 櫛田 幸弘

    群馬県太田市の水源はすべて地下水に依存しており、このまま取水を続けると今後は地盤沈下をはじめ、水質の悪化、水脈の枯渇等地下水を取り巻く環境の悪化が予想される。1983年4月、水源の一部を渡良瀬川より取水して水道水の安定供給を図るため、第5次拡張事業をスタートさせ、その一環として本工事が計画された。わが社に於いても、約30年ぶりの液体窒素方式による地盤凍結工事であり、過去に於ける様々な問題、教訓を元に工夫を加え施工を行い、無事完了することが出来た。今回、その施工状況を示し、今後の参考になると思われる技術について述べる。

  10. 凍結膨張対策としての吸収孔設計手法の一提案
    奥 俊彦 小林 進 松岡 啓次

    粘性土地盤に凍結工法を適用する際、周辺構造物に対する凍結膨張の影響を軽減するために、吸収孔を設置する場合がある。しかしながら、現状においては吸収孔の配置に関する設計基準は確立されていない。本稿では、FEMを用いて凍結膨張圧が加わる吸収孔周辺地盤の応力解析を行い、凍結膨張圧の影響を受ける吸収孔要素を調べて、吸収孔が崩壊を開始する際の圧力について定式化を試み、この式を用いて地盤せん断強度、構造物許容応力、及び地山抜き取り量より吸収孔の径と間隔を決定する設計手法を提案する。

  11. 凍結工法における凍着強度に関する実験的研究(1) -裏込め材の強度及び凍着剪断への垂直応力の影響-
    上田 保司 森内 浩史 隅谷 大作

    本稿では、凍結工法の現場で用いられる材料及び条件による基礎的凍着強度実験の結果について述べる。まず、シールド工事で用いられる裏込め材と鉄材との凍着剪断強度及び凍着引張強度を調べた。裏込め材の鉄材への凍着強度は、砂凍土よりも小さく、氷よりも大きかった。同一の材料では、凍着引張強度が凍着剪断強度よりも大きかった。鉄材への錆止め塗装により、凍着強度は減少した。また、鉄材表面に塗布したシールドテールグリスの厚みの増加に応じて凍着強度は減少した。次に、凍着面への垂直応力が粘土凍土と鉄材の凍着剪断強度に及ぼす影響を調べた。垂直応力が大きくなるほど、凍着剪断強度は増加した。

  12. 解説:凍土の力学的特性
    生頼 孝博 上田 保司

    地盤凍結工法におる最も大きな特徴は、凍土の優れた強度の利用である。1977年から、必要最小限の凍土厚みでの設計施工を目指して、凍土の強度に関す組織的な研究を続けてきた。圧縮・曲げ・せん断・凍着・クリープ強度の実験的研究および構造体としての円板型・円筒型凍土の変形破壊の実験解析的研究によって得られた成果に基づいて、凍土の力学的特性を概説する。
    なお、本稿は地盤工学会誌「土と基礎」H15年5月号掲載予定原稿を基に、加筆編集したものである。

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精研技術報告集 No.01 2001

  1. 醸造工場(ハナマルキ㈱殿)新築工事に於けるHACCP対応
    柳本 申二 森 務

    ハナマルキ株式会社で、味噌は現状HACCP対象品ではないが、市場ニーズと将来性を考慮してHACCPに準拠した生産工場にすることを主目的に新工場を長野県伊那市に建設することになった。
    HACCP方式とは危害の発生を事前に予防するシステムで、品質管理のために最終品のサンプル検査を行う方法とは異なり、食品の原材料の段階から製造、出荷までの各段階で、食品の危害発生につながる危険要因を調査、分析、予測し(HA)、予測された危害を除去するため特に厳重な管理が必要な作業工程や検査工程を重点管理項目(CCP)として管理するものである。

  2. 徳島県子ども科学館における空調設備-天井高さの異なるドームの吹き出し方法の検討-
    小林 豊彦 下坂 和裕 宮北 智仁

    本報告では全設備概要を示し、システムトラス構造からなるドームの空調設備を中心に示す。当初の設計では、ドーム内は等径のノズル吹き出しとしていたが、気流解析の結果、低層部の居住域での風速が大きすぎることが分かった。その対策としてパンチングダクトに変更した。このダクトは吹き出し口の数を多くとることができ、しかも吹き出し口方向も自由にすることができる。更に、ダクト全体に内貼り断熱ダクトを採用した。これらの変更により、ダクト荷重を当初設計の約1/2に押さえることができ、更にダクトの工場製作により、現場作業の省力化及び工期短縮することができた。

  3. 東京湾横断道路・凍結工事に見る技術開発成果
    渡邉 恒方 吉井 修 加藤 哲治

    東京湾横断道路(以下で湾横と略記する)工事における凍結工法の設計は、1970年代後半に、発進防護、地中接合防護等の概略設計でスタートした。しかしながら、当時の社会情勢で湾横建設計画が一時期棚上げされ、後に、国の“内需拡大方針”で復活するまで、凍結工法の設計も進捗しなかった。最初の概略設計から10年後の、1980年代後半に発進防護凍結工、地中接合防護凍結工、連絡横坑築造防護凍結工等の設計検討が本格的に始動した。湾横凍結工事で設計施工した個々の技術開発は、当時開発中であったもの、大深度・大規模凍結に対応すべく新たに開発をスタートしたもの、さらに、施工中に難条件をクリアーするために開発したものでその数は多い。本稿では、湾横凍結工事に際して開発し、採用した技術項目を挙げると共に、その中での主な技術に関しての開発経緯とその内容を概説する。詳細は巻末の参考文献に譲る。

  4. レキ層における30m水平凍結管埋設方法の開発
    廣川 修一 吉田 聡志 酒見 浩一

    現場におけるレキ層での水平凍結管埋設について、これまでは①メタルを交換出来ない凍結管掘りでは、メタルの磨耗の為、長尺の埋設が困難である②従来厚みの凍結管掘りや薄肉ケーシング削孔では、管が折損し出水する場合がある③上記②への対策である厚肉のケーシング削孔では、これを埋め殺しにする為、費用がかさむ④硬いレキが障害となり、孔曲がりが大きい⑤孔曲がりが大きい場合、従来法では正確な孔曲がり測定が出来ない場合が多い等の問題があった。
    これらの問題は近年、大阪で施工した天満砂礫層に凍結管を埋設する現場で顕著となり、レキ層に凍結管を埋設するには削孔方法の根本的な改良が必要であると判断した。

  5. 凍結発進現場(諏訪共同溝)に於ける膨張対策工とその効果
    小林 進 松岡 啓次 仁田 政孝

    諏訪共同溝シールド機発進防護凍結工事で、近接した幹線道路橋脚への凍結膨張対策工として、連続した溝状に地山の抜き取りを行った。対象となる地盤は硬質粘性土のため、地山抜き取りは、高圧水噴射工法で高圧水を一方向に噴射することで実施した。現地盤の変位を計測しながら順次抜き取りを実施し、橋脚の変位を管理値以内におさめ、工事を無事終了する事が出来た。凍結膨張変位を予測する手段として従来からFEM解析を行ってきたが、今回、実施工に即したFEM解析値と現地盤変位の計測値との比較を行い、解析の妥当性を確認した。また、対策工を行わなかった場合の橋脚変位のFEM解析値を計測値と比較することにより対策工の効果を確認した。

  6. 膨張・収縮可能なチューブ表面での製氷及び氷の剥離実験
    香月 達弘 清水 洋 山本 英夫

    変形可能な軟質チューブに内圧を加えることによるチューブの膨張、伸びを利用して氷の破砕が可能なこと を実験により確認し、氷の破砕に最適なチューブの形状、材質、氷厚、並びに氷の剥離に最適な温度条件、加 減圧力などの条件を調べた。このチューブを製氷パイプに応用することで、製氷原理の簡単なスタティック方式 の製氷方法を継承しながら、温熱を使わずにチューブの膨張・収縮のみで製氷片を冷却面から剥離浮氷させ、 繰り返すことで多量の氷片を得ることのできる新方式のダイナミック製氷方法を開発した。

  7. 鋼管補強による凍土梁の曲げ強度特性の改良
    上田 保司 生頼 孝博 山本 稔

    鋼管を引張り側に包含した凍土梁試験体を作成し、曲げ載荷実験を行い鋼管補強効果を調べた。凍土単体梁との比較から、強度増加効果が確認できた。また、破壊に至るまで鋼管と凍土との凍着が切れない完全合成梁としての解析手法を導出した。凍土と鋼管との凍着が切れない場合には、荷重~たわみ曲線及び破壊荷重の解析値は実験値と概ね一致し、凍着切れを起こす時点の凍着応力の解析値も、凍着強度の実験値とほぼ一致したことから、解析手法の妥当性が確認できた。現場規模での試算から鋼管包含による凍土厚の削減量を示した。