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  3. 国宝高松塚古墳における(株)精研の関わり

国宝高松塚古墳壁画を恒久保存するために、文化庁は①【石室解体工程】、②【壁画の修理及び保存処理工程】、③【恒久保存工程】に区分され、対応されています。2007年8月21日には工程①の石室解体が無事完了し壁画(石)は事前に完成した修理施設に運ばれ、工程②に移っています。
その後、壁画(石)は工程③で大切に保存される事になります。
(株)精研は、2005年9月から工程①までの期間、大切な壁画を守るために墳丘地盤冷却業務を、 工程②で使用される修理施設の設備工事を施工致しました。

【掲載1期】2005年7月 冷却パイプ設置工事を始めました

劣化が進む国宝壁画の保存を目的に、 石室の解体が決まった奈良県明日香村の高松塚古墳(特別史跡、7世紀末―8世紀初め)で、 文化庁は2005年7月、石室内の温度を安定した状態で下げるため、 古墳全体を冷却する冷却工事を決定しました。 独立行政法人 文化財研究所が担当し、実施は当社でさせて頂く事になりました。

1980年代以降の外気温上昇の影響を受けて石室内の気温が上昇した事も、 原因の一つとなって 壁面にカビが発生、壁画の劣化につながったと考えられています。 文化庁は2006年末にも行われる石室解体までの緊急措置として、 冷却パイプを利用して石室内の温度を15℃以下に下げ、カビを抑えることにしました。

墳丘の表面と、石室の床下1.5メートルの地中に、約150本のパイプを設置し、 2℃前後の冷却水を循環させ、上下から挟むような形で石室を冷やします。 石室内の温度は11月ごろが最も高く、20℃以上にもなります。 冷却は9月初めから開始する予定です。

【掲載2期】2006年2月 高松塚古墳石室の温度を下げるための冷却運転を継続中

文化庁は石室解体までの緊急措置として、
冷却パイプを利用して石室の温度を10℃以下に下げるために、
2005年9月から2℃前後の冷却水を循環させ、冷却を開始し、
2006年2月現在まで順調に冷却が進行しております。

晩秋季の地盤温度昇温等の諸条件を考慮に入れ、
所定の温度になるのは2006年4月になります。
以降は地盤温度の計測管理を継続し、冷却運転維持を行います。

【掲載3期】2007年9月 冷却運転を終了しました

2007年6月1日をもって墳丘地盤冷却運転を終了しました。
2005年9月から起算して22ヶ月間の冷却を実施したことになります。
以下第6回報告抜粋 墳丘冷却の経緯については、第5回国宝高松塚古墳保存対策検討会にて報告された。
ここでは、墳丘部の温度実測結果を以下に示す。
墳丘部の温度測定点と計算結果との比較から、
墳丘部の冷却は当初の予定通り進行していることが分かる。
3月初旬に墳丘部表層の温度を上昇させたのは、
石室内の温度を10℃に維持するためである。

国宝高松塚古墳壁画仮設修理施設 新営機械設備工事

施設の概要
建 設 地 奈良県高市郡明日香村大字平田538 国営飛鳥歴史公園内
構造階数等 鉄骨造 平屋建て
建築面積 516㎡
延床面積 490㎡
設  備 空気調和設備・換気設備・排煙設備・自動制御設備・衛生器具設備
給水設備・給湯設備・排水設備・消火設備・ガス設備
空調条件 修理作業室内の温度 夏季20~26℃、冬季16~21℃
相対湿度は年間を通して45~65%を常時維持
主要機器 ブラインチラー×1台
冷却能力 23.6Kw
冷温水同時取出型空冷ヒートポンプチラー×1台
冷却能力 118Kw・加熱能力 140Kw
プレート式熱交換器×1台
交換熱量 24Kw
加熱用電気ヒーター×1台
交換熱量 24Kw     

<修理作業室内の様子>

安定した作業環境を確保するために温度と湿度を一定に保つ高度な空調設備を設置。
修理作業室、調査機器室及び準備室が高度空調エリアとなっている。

真夏の晴天時における外気温度35.5℃の時、石板搬入後の無人で密閉された状態で
1日間空調停止した場合の温度変化が2.5℃以内という条件が設定されている。
そのため周囲に空調された空気層を持つ二重壁による魔法瓶構造となっている。
空調設備は、<室内空調系統> <二重壁空調系統> <外気処理系統>の3系統に分かれている。

<室内空調系統>
修理作業室、調査機器室及び準備室の空調を行っており外部空気の侵入を防ぐ為、
室内圧の制御(正圧制御)を行っている。

<二重壁空調系統>
外壁を通して侵入する熱の処理を行っており、外乱の影響を吸収するために天井裏、
二重壁内、ピット内の空調を行っている。

<外気処理系統>
温湿度を調整された外気を室内に送ります。局所排気、ドラフトチャンバー運転時に、自動的に室内の圧力を調整できるように、外気供給量を制御している。

石版上部には可動式の局所排気ダクトが設けられている。